ホテルについての作文

今日は半年くらい当校でロシア語を勉強している生徒の作文を発表したいと思います。短くてもとても意味が分かりやすいので、文書のつながりがいいのだと思います。テキストの終わり方も完璧です。

Я всегда останавливаюсь в одной и той же гостинице в Токио. Она маленькая, но дешевая и чистая. Это далеко от города, но очень удобно для меня. Потому что это близко от дома моего друга.
Однажды я остановился в великолепной гостинице. Она была с бассейном и тренажерным залом. Я мог есть закуски в лаундже. Комната была очень большой, персонал был очень добрым.
Когда-нибудь я хочу остановиться там снова.

この作文を受け取った時、それぞれの文は新しい行から始まっていました。メールであればそれでも良いですが、エアメールですときちんとした決まりがあります。段落毎に改行して書くべきです。文は必ず大文字から始めましょう。

Остановиться とостатьсяの違いを説明します。
「オスタノビーチシャ」は「動いた物が止まる」或いは「ホテルで泊まる」の意味があります。
例えばМашина остановилась. 「車が止まった。」
「オスターチシャ」は「どこも行かずにそこで残る」或いは「それしか残っていない」の意味があります。例えば
Он остался дома.「彼は家の中に残った。」泊まると間違えないように!
Остался только один рубль. 「1ルーブルしか残ってなかった。」

最後は皆様にホテルのテーマについて質問があります。私は安いホテルにしか泊まったことないので、лаунджという言葉を初めて見ました。ロシアのラウンジ階へしょっちゅう行ってる方はその言葉を確認して教えてくださいね。

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日露バイリンガルの研究紹介6

前回に引き続き、パソバさんの学位論文から、日本における今後のロシア語教育に関する提言が書かれた部分を紹介いたします。

親による学校の選択、教員による教科書や、指導方法の選択は、親の動機づけ、学力に対する期待やビリーフによって、どの程度会話とリテラシーが伸ばせるか、どの程度読み書きが伸ばせるのか、リテラシーとの関わりを強めるのか、指導する上での目的によって手法が異なる。また、カミンズ・中島(2011)による、教科書の選択についての指摘は、きわめて重要である:「学校の中で社会の主要言語で書かれた教科書を基盤とした

単線のリテラシーのみに焦点を当てるのは、極めて限界のある指導方針であ」るという。カミンズ・中島(2011)は、日本の学校におかれた児童・生徒に対して述べているが、筆者は、それと同様に、ロシア全国で使用される「ロシア語母語話者」を対象にした教科書が、限られた言語使用状況にある「ロシア語継承語話者」に使用されている「付属学校」、特に2.5 世のことを考えると、同様に限界のあると認めざるを得ない。

ロシア語が開設された学校においてロシア語を履修したい日本人が減っている一方、今後は、ロシア語継承語話者(ルソフォーン(74))の編入が予測される。それによって、大学や高校の状況が肯定的に転向すると思われる。まずは、学習動機の働きで、ロシア語の社会的なステータスが上がると思われる。この意味で、イ・ヨンスク(2009)が指摘している通り、「多言語」の「多」そのものの肯定である限り、近代国家が目指してきた「単一言語主義」に対するアンチテーゼであり、思想史的に言えば、「近代」を乗り越えようとする一つの試みである。多言語主義(plurilingualism)については、林田(2010134)の以下の提示がある:「複言主義、生涯教育という2 本の柱を中心にした、(74) フランコフォーンに類似じた用語である[Kудрявцева 2008]。家庭に限られているロシア語によるコ

ミュニケーションの継承語話者である。

多言語・多文化教育の一環としての中等・高等一貫のロシア語教育体制というものを視野に入れ、高校、大学教員のみならず、都道府県教育委員会や学会を含めた連帯ネット・ワークを作り、①教育・学習プログラムの作成、②教材、指導方法の研究・開発とその普及、③教員養成、④教員配置 の各点について早急に検討・作業を進めていくことが求められている」。しかし、カリキュラムには、新たに継承語話者の枠を別に設けないと、今までの第二外国語としての指導手法では適切であるといい難い。それに関連して、HLL (heritage language learners) の特徴についてMasako O. Douglas (2008) の指摘をあげたい:It has been suggested that heritage language

learnrs of other languages exibit characteristics similar to Japanese heritage learners (for example, for the

characteristics of Spanish heritage learners, see Valdes, 1995; Valdes and Geoffrion-Vinci, 1998: Ibid.).

Curricula for heritage learners should be designed with these characteristics kept in mind, and should

accomodate the different needs of individual learners’.そこで、新しいカリキュラムの開発が求められる時代がやってきたといえるだろう。

パソバ・オリガさんの学位論文についてのシリーズはとりあえず、今回で最後になります。パソバさんおよび林田先生のおっしゃっていることは、将来的には日本の公的教育機関が、日本や日本語の国家的・文化的尊厳を維持しつつ、かつ日本が多言語共生社会に変化しつつあることを踏まえ、日本語教育を変革させるべき、という主張です。私どもは、その変化の流れの中、ロシア語に軸足を置いたサービスを提供しています。

さらに私どもが属するкомпасというロシア語を継承語として扱い、日本語ロシア語のバイリンガルを対象にしたロシア語学校のグループがあります。現在8校ののロシア語学校がメンバーですが、一つ一つが保護者の希望やニーズに合わせた教育をしようと日々努力しています。受け入れ人数の制限はあるものの、保護者の選択肢はおそらく皆様の想像以上にあるはずです。Skypeによる遠隔授業に取り組んでいる学校もあります。何よりも、これらはいわゆる営利目的一辺倒の学校ではありませんので、まずはお子様の置かれた状況や今後の目標などを相談されることをお勧めいたします。ご一報いただければ、お宅に一番近いメンバーの連絡先をお伝えいたします。

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日露バイリンガルの研究紹介5

前回に続いて、学位論文からの研究結果についてです。今回はバイリンガルのお子さんの第一言語、第二言語間の転移についてです。転移というのは、通常第二言語の学習に母語が影響することを総称して言いますが、プラスに働く場合を正の転移、マイナスに影響することを負の転移といいます。取り上げた論文では、言語間で影響しあうことを転移とし、より広義な意味でこの言葉が使用されています。

以下抜粋をご覧下さい。

本研究では、言語体の異なる異言語間においてもカミンズが提唱した2 言語間の相互依存関係はロシア語を第一言語にする子どもの場合でも、第二言語として学ぶ子どもには転移が見られた。例えば、2.0 世の日本語による読書時間と日本語において認知面を含むすべての得点の間と、ロシア語による読書時間は、表現、イントネーション、描写説明、語彙という項目において正の相関が確認された。2.5 世児にも、同様な結果がみられた。この点について実証的な研究になったが、すべての子ども、すべての言語領域に及ぶ研究成果ではない。しかし、全体的にみると、日本語の得点がより高く、ロシア語は5%水準で有意な相関を示す傾向が目立つ。これは中島(2013)、カミンズ・中島(2011:93)が予測した結果となる。第二言語から、第一言語への転移は、見られていないケースが少なくない。ただし、学校で母語を使って学ぶ機会があれば、学校言語で学んだ概念、言語リテラシーの力が母語に転移するとカミンズ・中島(2011)が指摘している。さらに、学校が効果的に母語を教え、母語のリテラシーも育つ環境であると、学校成績も上がる。相互依存の原則には、言語形態上の転移以外にも、いろいろな転移が含まれる。言語が置かれている社会的状況によるが、言語相互依存説で指導上もっとも大事なことは、異言語間の知識や技能の転移の促進をはっきり意図した指導が必要である[カミンズ・中島 2011:79]。

なお、本調査では、以下の領域で転移が見られた:概念的用要素の転移(たとえば、「担任先生」、「脱皮」、「熱帯」、「博士」、「温暖化」という概念の理解等)メタ認知ストラテジー、メタ言語ストラテジーの転移(記憶法、語彙学習ストラテジー,自己訂正・反省等)。

簡単に言えば、ロシア語を継承語として習得させるならば、日本語での学校教育をおろそかにしないこと、またロシア語での教科教育も合わせておこなえば、ロシア語の習得、日本語の習得、および学校の教科習得にも良い影響をあたえることが示唆される、ということでしょう。そして、このパートでのキーとなる点はやはり、「異言語間の知識や技能の転移の促進をはっきり意図した指導が必要」

であるとの指摘です。つまり、ロシア語・日本語のバイリンガルのお子さんの教育には両言語の特性を理解し、転移を促進させることが効果的ということです。

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日露バイリンガルの研究紹介4

過去3回パソバ・オリガさんの学位論文を参照してまいりましたが、今回はその研究結果から、日露バイリンガルの犯しやすい間違いについてまとめられた部分を取り上げます。我々の経験からの知見とよく合致するものですが、研究目的での分析ではありませんでしたので、今回は皆様に紹介し、バイリンガルのお子さんへの継承語としてのロシア語の教育が「専門分野」であることをお伝えしたいと思います。

以下青字はパソバ・オリガさんの学位論文からの抜粋です。

最近、この40 年以上にわたって、学習者の言語・認知・学力の発達に加算的バイリンガリズムの肯定的な影響について200 本の研究が既に実施された。「加算的バイリンガリズム=付加的バイリンガリズム」とは学力的・概念的にも母語を発達させながら、第二言語を学習することの意味とする(付加的バイリンガリズム参照:小池,生夫編2005:85)。

継承教育の研究をしているПодгаевская (年度非公開)の観察によれば、継承語学校の受講者の多くには、文法カテゴリー自体(「動詞」、「名詞」、「語尾」)についての理解が浅い。しかし、ロシア本土や大使館付属学校の教育方針は、その概念についての充実した理解を求めていることになっている。しかし、現地学校は、その文法カテゴリーの概念化には、焦点を当てていないため、問題が起こる。そのため、動詞の活用のミスは、避けられないだろう。ただし、長年にわたるПодгаевская

の観察に基づいて、7 歳のバイリンガル児童は、すでにロシア語の動詞を扱うことができ、動詞の時制、命令形、不定形を活発的に利用している。しかし、主な問題は、名詞、形容詞、代名詞、数詞の活用における語尾の誤用等に表れている:所有代名詞と関わる名詞の語尾不一致が少なくなく(“мое день рождения”「私の誕生日」など)、名詞の性、数と動詞の語尾変化の不一致も目立つ。たとえば、“Звонил Ямада”(「山田さんが電話をかけた」)という例で、山田さんが女性であれば誤用である。

名詞、数詞の格変化にも問題が多くみられた。数詞に関する誤用の例をあげると、以下の例のように、被験者の多くが数詞の格変化を避けて、全部を主格にする傾向がある。

– А у тебя нет кошки?

– Нет, потому что у меня аллергия.

– На кошек?

– Да. Где-то до четырнадцать лет нельзя. (JF21: 「導入タスク」)

名詞に関して言うと、 “Дом из кирпичев”(「レンガ造りの家」の生格), “дом из сены”(「藁で(できた)」の生格)、 “поросёнков”(「子豚たち」の生格変化)などの誤用例が多くある。あるいは、以下の例の通り、「テーブルには何がありますか?」という問いに対し、「水」という単語の語尾の格が間違っている例がみられる。その理由は、「水」は「水をください」といった日常生活においてしか聞いていないため、その表現の格をそのまま用いるためである。

‐ На столе что мы видим?

‐ Чай или водички. (JF06: 「部屋」カード)

名詞とともに使う前置詞の運用にも問題がみられた。特に2.0 世以降の場合は、 “в / на”という前置詞の使い分けがしにくい。たとえば、 “в полу”(「床の上」)といった誤用例が圧倒的に多く、また、それとともに前置詞の省略も目立つ。 “Ты можешь прийти моё день рождения?”(「私の誕生日

のパーティーに来られますか?」)の例のように、名詞・代名詞の性が一致していないほか、 “на”という前置詞が省略されている。継承語話者は、特に正解がわからないとき、しばしば前置詞を省略する。ほかにも、“ото рта”「口から」といった前置詞に誤用の例が目立つ。このことは、ロシア語の基盤となる格変化の制度は、7 歳のバイリンガル児童にはまだ完全に発達していないから、起こるのである[Подгаевская Ibid.]。

動詞の選択にも誤用の例があったが、以下にあげている例と同様に文法的に正確ではない動詞の活用のほか、抽象概念を表す名詞に求められる動詞が不足しているのがロシア語の継承語話者の共通問題であると思われる。

また、再帰動詞(“-ся”という接尾辞が付いている/付いていない他動詞・自動詞の関係)を区別できず、 “Волк догнался”(「狼は追いかけた」)、“одевает”(「着る」) といった誤用例が頻繁に出てくる。前者の場合は “-ся”が不要であるが、逆に後者の場合は、対象がなければ、 “-ся”が付いていないと不自然である。上記の例は、母語話者の直感でしか区別できない微妙な違いのパターンを示している。

以上を踏まえ、2.0 世児以降の母語不一致家族の子どもも継承語教育としての特別な指導が必要であるとわかった。

 

Jarucoでの例を少し加えますと、

バイリンガルのお子さんには(“Моё День рождения”「私の誕生日」)”等の誤用例がよくあります。正しくは: “мой День рождения”.です。軟音で終わる名詞の中に女性と男性形の両方がありますが、子供たちににわかりにくいのは、なぜ”добрый день(男)”と “тёмная ночь(女)”の所の語尾が同じではないかということですね。どうやって”конь”(馬雄)と”лошадь”(馬雌)の性別を区別するのか、どうしても辞書で確認しないとなりません。”зелёный тетрадь”(緑のノート)みたいな間違いはしょっちゅうおかすものです。

特別な形ですがロシア語で-а/-яで終わる男性名詞もいくつかあります: папа, дядя, дедушка, Миша, Петя…その時子供が活用できずに”Папа пришла”(父が来た)と良く言います。正しくは:”Папа пришёл”. です。

生格の複数男性名詞には-ов/-ев/-ейという語尾があり、どちらがいつ使えるかの文法上の規則が不明確で、子供たちを悩ませています。

さらに、動物の子供についても特別な複数形があります。たとえば

поросёнок – поросёнки – поросята

жеребёнок – жеребёнки – жеребята(子馬達)

котёнок – котёнки – котята(子猫達)

“поросята”から生格にすると”Волк хотел съесть поросят”(狼が子豚を食べたかった)になります。

Сèноの場合はアクセントが語尾の所にないので、「о」は「а」に聞こえます。子供はよく女性名詞と思って格変化させてしいます。”Дом из сена”或いは”дом из дерева”が正しいですね。

ВとНАの違いも確かに多いですね。具体的に日本語の「の中」と「の上」のように教えます。ただしそれだけではバイリンガルはセローフの絵を見ながら”персик на руке”(桃が手の上)と言ってしまいます。

さらに、否定が入る”Тебе не хочется?” (英文訳Don’t you like?)という質問に対しては、バイリンガルはよく ”Да, не хочется”(はい、欲しくありません)と答えます。ロシア語でも他のヨーロッパ言語とともに(No, I don’t )のように”Нет, не хочется”と答えなければなりません。

バイリンガルのお子さんの間違えそうな部分を予め把握、予想し、そのような間違いに対処した教育法が必要であることが良くお分かりいただけることともいます。

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日露バイリンガルの研究紹介3

前回に続いてパソバオリガさんの学位論文を参照します。以下青字部分は抜粋です。

日露結婚で生まれた子どもの多くが、アジア人ではないことが周囲に対しても格段に目立つ。Zimmerman (2010 :8 )は自身の捉え方(自己アイデンティティの形成)が、本人がいかに自分自身を捉えているかばかりでなく、他人の認識によっても成り立っていると語る。「人が自分を別のエスニシティに属するものと思いこもうとしても、外見(専門用語では表現型phenotype)という制約があることも認めなくてはならない」とするコーエン・ケネディ(2010:193)の指摘がある

子どもの発達心理学においては、民族アイデンティ形成について研究が盛んであるが、子どもは大人になるまでに、民族アイデンンティティ形成期の三つの段階を通して成長しているとするラムゼー[Ramsey 2012]の指摘がある。

このような態度を取る子どもがいる。『息子のクラスには、「ハーフ」がいて、白人とのコミュニケーションを避け、日本人だけを友達に選んだ。自分がハーフであることに悩んでいた。』そのほか、「子どもは自己アイデンティティに迷っている。西洋人が彼らを仲間に入れてくれないし、アジア人も。。。自分の子どもからよく質問される:「お母さん、私たちは、何人?」それに対して「ハーフ」との返事に喜んでくれない。行動、考え方も違う。ヨーロッパ人とも、アジアン人とも。。。子どもからの正直な意見は、「ハーフ」ではなく、純日本人あるいは、純白人で踏襲生まれていたらよかったのに...」[Russian speaking community http://www.facebook.com 2013 年2 月16 日から]。

中島(2012)がまさしく示唆している通り、日本の学校に入ると、日本人ではないということでのマイナス・イメージがあり、アイデンティティが肯定されないケースもある。

そこでロシア語コミュニティでアイデンティティを肯定してあげるということも大事であると中島 (2012)がまとめている。

継承語を通じて自分の文化背景を認識するということに関しては、子どものアイデンティティ形成におけるポジティブな例があげられる:「私の家族のメンバー全員から(ロシア側の母親の家族)、子どもに対して『あなたは、ロシア人です』と言われ納得した。彼は満足しています。」[Russian speaking community http://www.facebook.com 2013 年2 月20 日]。こういったケースには、同化を促す傾向が強い日本学校文化の中を生きる子どもたちのアイデンティティ構築においては、ロシア語継承を通じて、自分がダブル・アイデンティティ保持者であるといったポジティブな進展が起きるのではないかと思われる。

このように、私どもの対象であるバイリンガルの生徒さんは日本人とロシア人あるいはロシア語を母語とする方とのカップルから生まれたお子さんのため、外見上アジア同士のカップルとは明らかに異なっている場合が多いです。さらに日露のバイリンガルのお子さんが日本の学校に入学する際の問題点として、同化を促す学校の意図と反して、友達同士の関係では、どうしても外国人ともみなされてしまう現実があり、このことが子供たちのアイデンティティの揺れの原因となると言う指摘です。ただし、ロシア語を継承語として習得する上で、ダブルアイデンティティと言う認識が構築され、これは本人にとってポジティブな認識であろう、とまとめられています。

私どもが指摘するまでも無く、ハーフのお子様の民族アイデンティティは本人にとっても家族にとっても大きな問題です。これを言わば攻撃的に解決するためには、やはり両方の民族の有する文化・言葉を習得しこれらに自信あるいは尊厳を持ち、それによってダブルアイデンティティを有することに肯定感が得られる、ようにしてあげることも一つの解決法でしょう。楽観的に見るならば、今後日本のみならずグローバルに国際結婚が増え、異なった人種間のハーフが増えていくことは自明ですので、そうした環境下での民族アイデンティティの研究は進むはずです。我々もこれらの研究を注視することを継続し、今後もこの課題に真摯に取り組み、ハーフの子供たちの将来をご家族と共に考えて行きたいと思います。

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日露バイリンガルの研究紹介2

前回に続き、パソバ・オリガさんの学位論文を取り上げます。タイトルは「日本におけるロシア語話者「移民」の子どもへの継承ロシア語教育の展望 : バイリンガル教育からの視点」で、その中の先行研究についてまとめられた部分を以下要約します。

言語発達の著作においては、継承語教育に関して中島和子(1998(a);1998 (b);2000 ;2005;2006; 2010;2012)の研究が数多くあげられる。また、学校や環境における2 言語習得についてカミンズ(1980; 2007;2011)の研究蓄積が大きい。

カミンズは、習得時間の差に注目して言語能力の内部構造をBICS とCALP の2 つに分けた。BICS はBasic Interpersonal Communicative Skills(会話力)で、対人関係における基礎的なコミュニケーション能力を指しに用いられる。CALP はCognitive Academic Language Proficiency(学習言語)で、これは、推測・比較する認知的なツール、教科内容と教科用語、教科別教室談話、学習ストラテジーなど全体を含めるものである。しかし、この2 件は、誤解が多くなされ、批判された。例えば、中島・ヌナス(2001)は、異言語間で学齢期を過ごす児童の会話におけるCALP 面の習得の必要性を重視しており、「CALPという概念は必ずしも語彙、読解力に限られたものではないが、会話力におけるCALP面はほとんど言及されることなく、BICS (Basic Interpersonal Communicative Skills)というレッテルをはられ」る傾向があると指摘している。

カミンズ・中島(2011)は、CALPとBICS という二つの側面を以下のようにCF とDLS とALP を三つに広げて、子どもの言語発達を見ようとしている。

1) 会話の流暢度(Conversational Fluency,CF またはBICS)は、頻度の高い語彙と簡単な文法を含み、外国人児童・生徒は、1、2 年で習得ができる。

2)弁別的言語能力(Discrete Language Skills, DLS)従来はCALP の中に込み込まれていた基礎的な文法や文字の習得が含まれるが、5~7 年もかかるCALP とは異なり外国人児童・生徒も母語話者(母語児童)とほぼ同じ、1、2 年で習得するものである。

3)教科学習言語能力(Academic Language Proficiency, ALP または 従来のCALP)は読字力、作文力、抽象語彙などが含まれ、複雑な話し言葉と書き言葉を理解し、産出する力と低頻度の語彙と複雑な文型、教科学習では言語的にも概念的にも高度な文章の理解頻度の高い語彙と簡単な文法構造にさらに分類され、それぞれを身につけるまでの時間が異なり、前者は5 年以上を必要とするのに対し、後者は5 年~10 年程度を要する。一番大事なAcademic Language Proficiency は9 歳から10 歳頃から急速に伸びると言われている。これが学習に必要な能力で、日本語なら漢字語彙も含まれている。カミンズ・中島 (2011)はALP を定義して「学校という文脈で効果的に機能するために必要な一般的的な教育知識とメタ認知ストラテジーを伴った言語知識」[カミンズ・中島 2011:Ibid.]という。特にリテラシーとの関わり(読書の量と幅、読みストラテジー、読書に対する態度と姿勢と読書習慣、そして多読、多書)が強調されている。

CALPと BICSについては言語を生業としている人にとっては理解が必須の概念ですが、それをさらに進化させたのがカミンズ先生と中島先生の上記の理論です。特にALPが9、10歳で急速に伸びるのは、子供の教育においてのJarucoでの経験則とよく合致します。

またメタ認知ストラテジーも言語教育によく用いられる用語ですので、まずは言語学習におけるストラテジーを包括的に紹介しておきます。言語学者のOxfordが1990年に以下のようにまとめました。

直接ストラテジー

1.記憶ストラテジー(Memory Strategies)

a.知的連鎖を作る:①グループに分ける ②連想をする/十分に練る ③文脈の中に新しい

語を入れる

b.イメージや音を結びつける: ①イメージを使う ②意味地図を作る ③キーワードを使う

④記憶した音を表現する

c.繰り返し復習する: ①体系的に練習をする

d.動作に移す: ①身体的な反応や感覚を使う ②機械的な手段を使う

2.認知ストラテジー(Cognitive Strategies)

a.練習をする: ①繰り返す ②音と文字システムをきちんと練習する ③決まった言い回し

や文型を覚えて使う

b.情報内容を受け取ったり,送ったりする:①意図を素早くつかむ ②情報内容を受け

取ったり,送ったりするために様々な資料を使う

c.分析したり,推論したりする:①演繹的に推論する ②表現を分析する ③(言語を)対

照しながら分析する ④訳す ⑤転移をする

d.インプットとアウトプットのための構造を作る: ①ノートを取る ②要約をする ③強調

をする

3.補償ストラテジー(Compensation Strategies)

a.知的に推測する: ①言葉的手掛かりを使う ②非言語的手掛かりを使う

b.話すことと書くことの限界を克服する: ① 母語に変換する ②助けを求める ③身ぶり

手ぶりを使う ④コミュニケーションを部分的に,あるいは,全く避ける ⑤話題を選

択する ⑥情報内容を調整したり,とらえたりする ⑦新語を造る ⑧婉曲的な表現や類

義語を使う

間接ストラテジー

4.メタ認知ストラテジー(Metacognitive Strategies)

a.自分の学習を正しく位置づける: ①学習全体を見て,既知の材料と結び付ける ②注目

する ③話すのを遅らせ,聞くことに集中する

b.自分の学習を順序立て,計画する:①言語学習について調べる ②組織化する ③目標と

目的を設定する ④言語学習タスクの目的を明確にする(目的をもって聞く,読む,話

す,聞く)⑤言語学習タスクのために計画を立てる ⑥実践の機会を求める

c.自分の学習をきちんと評価する:①自己モニターする ②自己評価する

5.情意的ストラテジー(Affective Strategies)

a.自分の不安を軽くする: ①斬新的リラックス法,呼吸法,黙想を活用する ②音楽を使

う ③笑いを使う

b.自分を勇気づける:①自分を鼓舞する言葉を言う ②適度に冒険をする ③自分を褒める

c.自分の感情をきちんと把握する:①体の調子を診る ②チェック・リストを使う ③言語

学習日記をつける ④他の人々と自分の感情について話し合う

6.社会的ストラテジー(Social Strategies)

a.質問をする: ①明確化,あるいは確認を求める ②訂正してもらう

b.他の人々と協力する: ①学習者同士協力する ②外国語に堪能な人と協力する

c.他の人々への感情移入をする: ①文化を理解する力を高める ②他の人々の考え方や感

情を知る

以上ストラテジー分類

 

最後にオリガさんの学位論文の中に、言語教育での読書の重要性が述べられています。これは経験則でもよく理解できることですが、研究結果から読書量、読書への意欲・態度の効果が示されており、Jarucoでも確信を持って、読書への意欲を掻き立てることを教育方針のひとつとしています。

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日露バイリンガルの研究紹介

前回予告しましたロシア語やバイリンガルに関する論文についての記事を収載します。今回取り上げるのは、ロシア語・日本語バイリンガルに関する秀逸な学位論文で、タイトルは「日本におけるロシア語話者「移民」の子どもへの継承ロシア語教育の展望 : バイリンガル教育からの視点」です。書かれた方はバソヴァ オリガさんで、一橋大学での学位(博士号)を収められた時のものです。

URL http://doi.org/10.15057/26714にて公開されています。

今回は、なぜ研究テーマを表題(タイトル)としたか、つまり課題の設定にいたる背景を見てみましょう。

要約しますと;

1.グローバル化が進み、越境する人々の移動が激しくなる状況下で、日本においても「移民」が増加している。国際結婚で生まれた子どもや、親の事情により来日する子どもも増えている。彼らは、家庭では母語を使い、学校では日本語を学ぶという点で、言語的にも移動している。子どもたちの『越境』は国家間にはとどまらず、学校間の越境も経験している。ロシア出身移民の子どもたちのなかで、二重就学経験者は少なくない(主に東京、神奈川、大阪、札幌)。これは、日本に移住しながら、双方の学歴を子どもに取得させたい親のストラテジーとされる。

2.90 年代以降、旧共産主義崩壊に伴うロシアの経済危機を背景に、来日するロシア出身の女性が増加した。また、ネットによるお見合いを経て、美しく過程的なロシア女性と誠実な日本男子との国際結婚で日本に滞在する女性は決してすくなくない。さらに、留学生の滞在長期化や定住化が進むなかで、彼らが日本で次世代を出産し、母国から家族を呼び寄せる傾向が見られる。

3.こうした特性を背後に日本では、ロシア語を継承語とし得る子どもの多くが、実際にはロシア語と疎遠な言語生活におかれ、外国人登録者として統計に反映されない(統計上で日本国民扱いのため、外国人の枠に含まれていない)国際結婚を経て育つ子どもの多い。また、子どもは日本生まれであることが多い。

4.継承語教育とは、親が自分の母語を子どもに伝えることであるが、ロシア出身「移民」の子どもに対する継承語を含む教育の場が、充分に備えられていない。日本全国に多数の民族学校、あるいはインターナショナル・スクールが存在しているのとは異なり、ロシア語の場合、コミュニティが支えるインフォーマル式の学習室で継承語教育を行う場合が多いのが現状である。しかし、制度化されていないゆえ、十分に整ってはいない。フォーマル形式の場として選択可能な学校は、他のエスニック・グループに比べてごく限られており、外交官の子弟を対象とする、全科目でロシア語による教育を提供する在日ロシア連邦大使館付属学校以外にはない。

5.日本語を母語とする国際結婚を経て育つ子どもは、母語である日本語も伸びなやむケースが目立つ。日本語も、ロシア語も伸びない状況が続く例が少なくない。

6.ロシア以外のエスニック・グループには、宗教及び教会が継承語教育の維持には大きな役割を果たすことが多い。それに対して、ロシアン・コミュニティは、保守的な宗教コミュニティとはなりえない。その背景には、ソビエト時代の宗教信者に対する政府のレベルでの追放が一つの要因として存在する。

7.ロシア語継承の教育について論じた研究も今日読むことができるが、ほとんどは、ロシア語話者グループ(旧ソ連出身ロシア語話者を含む。その内にはウクライナ、ウズベキスタン出身者が少なくない)を特定し、ディアスポラにおける継承語教育の問題点を指摘している研究である。しかし、「移民」の子どもを対象にした実践的研究は、日本における他のエスニック・グループ(主に中国人、ブラジル人)に関するものが見られるが、ロシア語話者を親に持つ子どもが置かれた状況を現時点で再確認し、日本語及びロシア語に関してかれらの言語発達を測定する研究は、皆無に等しい。

以上述べてきた問題を踏まえ、本研究ではロシア語話者を親に持つ日本に居住する子どもに焦点を絞る。

それでは簡単に解説を加えますと、

2では日本にロシア人が増加した一因を述べています。現在は興行ビザが厳格化されたため、こうした形での来日女性は減っておりますが、一方ロシアでビジネスを行う企業は増加しており、ロシアへ赴任したビジネスマンが花嫁を連れて日本へ帰国すると言うケースは今後も増えていくと思われます。

4ではロシア語を継承語として教育するシステムが未整備であることを指摘しておりますが、Jarucoはまさにこのような需要にお答えするために開校した語学学校です。

5ではロシア語・日本語のバイリンガルでは、両方が一定のレベルに達しないダブルリミテッドの状態に陥りやすいとの警告です。

6では日本に比較的多いブラジル・ペルーなどの南米系、これにフィリピンを加えたカトリックの国の人々には宗教を軸とした大きなコミュニティーを形成しやすく、一方ロシア系の国にはロシア正教と言う核があるにも関わらず、ここを中心としたコミュニティーが形成しにくいと言う現実を明らかにしています。Jaruco創立以前に、スペイン語コミュニティーへ日本語を教えていたスタッフがおり、彼らと余暇をともに過ごす際よく日曜日に四谷のソフィア協会へ行き、ミサに通い、スペイン語やポルトガル語、そしてタガログ語のコミュニティーの結束の強さを実感したとのことです。

7.については特に我々も強く思うことであり、もっとロシア語に特化した研究がなされ、成果が発表されることを期待すると同時に、我々の経験をさらに蓄積し、よりよい教育法開発に向けて情報を発信し、皆様と共有していきたいと思っています。今回取り上げたオリガさんの学位論文は、そうした問題に正面から取り組んだ研究結果で、今後ももう少し掘り下げて皆様に紹介したいと思います。また他のエスニックを題材とした研究結果であっても、一般化した理論はロシア語・日本語バイリンガリズムに応用可能な方法論は多くあり、これからも余念なく追跡していくつもりです。

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Jarucoの教育方針:学会や教育機関からの研究結果をいかす

ロシア語を含む全ての言語は日々変化をしており、ある変化は時間が進むと共に定着すれば新たな文法や単語となり、短い時間で消滅すれば単なる流行だったということになります。Jarucoでは、科学技術の進展や政治経済の変化から来る新たなロシア語の専門用語や表現を、種々のメディアから日々取り入れ、生徒様のロシア語習得目標に合わせた教材を作成しています。さらにロシア語教育法、バイリンガル教育法およびそれらに関連した研究も大学などの研究機関により日々進められており、学会誌や大学の博士論文にアプローチすることにより、これらの新たな知見を取り入れています。

 

 

 

 

 

 

先端的な科学技術を取り入れることは、特許などの知的財産を利用することの対価、つまりロイヤルティーの支払いや共同研究費などの莫大なコストがかかりますが、人文科学系の情報に関しては通常特許などの知的財産権がかかっておらず、それらを応用し、世の中に還元する際にもその分のコストをのっける必要がありません。その観点から言うと、ロシア文学、ロシア語教育研究、さらに幼児教育やバイリンガル教育に関する各学会への参加や学会誌の研究を通じて、自由にロシア語教育、ロシア語バイリンガルの育成を進化させることが、いわゆる大学や研究機関および教育関連の大企業のみではなく、Jarucoのような小さな組織にも可能となる分野がロシア語教育やバイリンガル教育であると捉えることができます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Jarucoのブログの中でもこれまで何度か、これら学会や学会誌関連の情報をお知らせしてまいりました。現在は情報ソースをさらに広げ、各大学の博士論文についてもアプローチしています。博士論文が参考になるのは、あるテーマについての新たな知見あるいは方向性が示唆されますが、その前提としての現状の問題点が浮き彫りにされることです。例えば、日本語・ロシア語のバイリンガル教育を題材とした博士論文を読めば、新たな知見の提示と共に現状の問題点が明らかにされています。優秀な研究者が2から5年を費やして、現状をまとめ上げ、さらに新たな考えを提示し、かつ関連の専門家から審査された論文は非常に参考になり、しばしばJarucoの方向性の羅針盤となりうるものです。

 

 

 

 

 

 

 

今後、当ブログで、Jarucoが採用した知見を提示してくれた学会誌上の論文や博士論文を、Web上で公開されたものを中心に紹介しようと思っています。

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当校のバイリンガル教育方針2

我々Jarucoはロシア語クラスを提供する語学学校です。バイリンガル教育にも注力しており、対象はロシア語・日本語のバイリンガルの子様です。日本においてなされるイリンガルの議論は、日本人夫婦が子供を日本語・英語のバイリンガルに育てるというケースがほとんどです。因みにいずれの言語にせよ、異なる母語を話す夫婦は、子どもに対して一貫してそれぞれの母語のみで話すことがバイリンガル育成のためには効果的であることがわかっており、一親(一個人)一言語方式による子育てを選択することが推奨されます。日本人夫婦の場合、一般的にはどちらも英語のネーティブではないので、片親が英語をもう一方が日本語を話すという一親一言語方式を取れません。よって、極端に言えば英語のインターナショナルスクールスクールへ通わせるか、あるいはイマージョン教育を施す私立の小中学校へ通わせると言う選択肢が最も近道となりますが、コストはかなりかかります。一方、日本人およびロシア語圏のカップルの間のお子様には、日本人は日本語のみで、ロシア語圏の親はロシア語のみでお子様と会話することにより、いわゆる一言語方式による効率的なバイリンガル教育が可能です。

しかし、英語以外の言語が対象になるときには若干の懸念点があります。日本の学校に通ういわゆる「ハーフ」の子ども達は、自分が友達と異なる存在に見られたくないと思う時期を経験する場合があります。最悪なケースとして、彼らは外国人である方の親と一緒にいるところを人に見られるのを嫌がったり、第二言語を使いたがらなかったりすることもあります。それは、自分達の母語や文化が支援も尊重もされていないと感じるからです。自分が住んでいる社会で尊重されている国際言語とりわけ英語の習得は、言語的にも認知的にも本人にとって大変有利です(加算的バイリンガリズム)。この点でロシア語は、ロシアが大国であり、海を隔てていると言っても距離的にはごく近い国の言語であるにもかかわらず、日本で注目されている言語であるとは言いがたいです。だからこそ、日本における日露バイリンガルのロシア語教育には、よりロシア語文化やロシア語圏の国々の尊厳をバックグラウンドとして強く有するべきと考えており、これはJarucoの教育方針の主要な部分を占めています。

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当校のバイリンガル教育方針

前回はバイリンガルの分類について書きましたが、今回はJarucoのロシア語・日本語バイリンガルの育成方針に触れたいと思います。語学学習にあたっては、一般的に学習者の言語学習動機、「聞く」、「話す」、「読む」、「書く」の4スキルのレベル、学習にあてられる時間などを十分に把握した後で学習計画を作成します。ただしバイリンガル教育を施すお子さんをお預かりする際には、「ご両親が考える理想のバイリンガルの姿」を伺うことが最も大切な質問になります。「ロシア語でも大学教育を受けられるバイリンガルに育てたい」というのが究極的な姿だと思いますし、Jarucoの設定している目標のレベルをそこにおいています。

その際、重要な事実としてお伝えすることは、「第二言語の習得において、聞く、話す、読む、書く、の4スキルは必ずしもバランスよく発達するものではない」ということです。 言語習得のメカニズムを考える場合、4スキル(話す、聞く、読む、書く)のうち、どれが最も重要かについて考えてみましょう。 人は、通常生まれた直後から満遍なくいくつかの言語に触れていれば、二つ以上の言語を母語として習得できる、ということがわかっています。これを「同時性バイリンガル」と呼んでいます。一方、母語の習得が確立されてから他の言語を習得することを「後続性バイリンガリル」と呼びます。幼児は、言語を流暢に話せるようになる1年くらい前までは聞くことによって言語を習得し、それに次いで、読むことや書くことができるようになります。耳からのインプット、つまり聞くことが言語習得、とりわけ母語確立の基礎なのです。

この点、親御さんは4スキルの内「話す」を偏重する傾向にあります。と言うのも、将来その言語を役立てようと思えば、その言語によるアウトプット、つまり「話す」、「書く」ができないと言語習得の意味が薄れてしまうという不安にかられるからです。 しかし子供たちは、聞くことにより、脳の中に言語構造を組み立てていっています。もし、子どもが目標言語であまり話さなくても、その言語について十分理解していれば、いわゆる「受容的バイリンガル」と分類できる状態にあり、その言語環境に一定期間(10日程度)置くことにより、流暢に話せるようになります。この様に、言語習得において、「話す」ことよりも、まず「聞く」力が最も必要なスキルと言うことができます。

もちろん、習得した言語を活用するには、その言語環境下での一定の対話の機会(意味交渉)が必要であることは間違いありません。研究によると、幼児の言語習得については、単にビデオを見せるだけでは効果がないということが分かっています。子どもは、言語とその意味を体験で理解するために、家族や友達のような意味交渉のできる対話者が必要です。外国語(目標言語)を遊びやその他の生活のために駆使する時間を計画的に設定し、実際の環境を模倣しての教育が不可欠です。

Jarucoのバイリンガル教育は、まずは「聞く」ことにより十分な情報をインプットし、ロシア語での生活体験、遊びの体験を計画的に配置して意味交渉を頻繁に行うことで、「話す」、「書く」のアウトプットを促し、ストレス無くロシア語が身につくよう設計されています。

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