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ゴーゴリ「検察官」を読むためのイラスト ロシアファッションブログ171

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出典:http://literatura5.narod.ru/gogol_moller.html#1847
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ゴーゴリ 「検察官」を読むためのイラスト

ロシアファッションブログです。シリーズとしてロシア小説における各シーンをモチーフにイラストを取り上げています。我々日本人が20世紀初頭のロシア文学を読む際、その小説の時代背景、土地柄などを想像するには困難を極めますが、その際ロシア人が描く、各小説の重要な登場人物やシーンのイラストを参照することで小説の理解をより高めることを期待しています。

今回は、ゴーゴリの「検察官」です。

小説抜粋の出典は、日本ブッククラブ発行、決定版ロシア文学全集 4 死せる魂ほか 米川正夫訳 1971年11月30日発行 です。

この作品は戯曲形式なので、最初に登場人物の性格と衣装の紹介がありますが、主人公の2人の描写とそのイラストをご覧ください。

市長 長年勤続して、非常に自己一流の才智に飛んだ人物。賄賂なども取るには取るが、極めて堂々たる態度を持している。生真面目で、幾分理屈屋だとさえ言える。声は高からず低からず、口数は多くも少なくもない。一言一句意味ありげである。容貌は、全て下っ端から叩き上げた来た人によく見られるように、下品でゴツゴツしている。心的傾向の粗野に発達した人によく見られる伝で、恐怖から喜びへ、卑屈から傲慢への推移は恐ろしく早い。彼は常に飾りのついた制服を着用し、拍車のついた長靴を履いている。毛髪は白髪まじりで短く刈り込んである。

出典:http://hallenna.narod.ru/gogol_revizor_il.html

 

フレスタコーフ 23歳くらいの背の高い痩せた青年。少し足りない男で、いわゆる頭の中に王様のない方である・・・よく役所などで、空っぽな人間と呼ばれている人物の一人。語るにも、動作をするにも思慮分別というものがない。何かある思索の上に、絶えず注意を向けるということはない。その話は断片的で、言葉は全く不意に口から飛び出してくる。この役は、正直に素直に演じれば演ずるほど成功するであろう。流行の服装。

出典:http://hallenna.narod.ru/gogol_revizor_il.html

 

では、『検察官』話は進んで、まずは第3幕、フレスタコーフ、そして市長の妻アンナと娘マリヤとの会話のシーンです。フレスタコーフの軽薄さが際立ちます。

フレスタコーフ 「そうです。雑誌にも載せます。尤も、私の作品はたくさんありましてね。『フィガロの結婚』とか『悪魔ローベルト』とか『ノルマ』とか、もういちいち名前を覚えていないくらいです。それもみんな偶然の産物なんですよ。私は何も書きたかないのですが、劇場の取締が『君何一つ何か書いてくれないか』というので、『じゃ、まあ書いてみよう』と思いましてね。すぐその晩に、なんでも一晩中にすっかり書き上げてしまって、みんなをびっくりさせたものです。私は着想の容易な点において驚くべきものがあるのです。男爵グラムベウスの名前になっているものはすっかり、『望みの船』も『モスクワ電信局』もみんな私が書いたのですよ。」

アンナ 「あらまあ、それではあなたがブラウンベウスでいらっしゃいましたので?」

フレスタコーフ 「そうですとも、私はみんなに文章を直してやるのです。本屋のスミルジンなぞは、そのために4万ルーブリ私に払っているんですからね。

アンナ 「それでは『ユーリイ・ミロスラーフスキイ』もきっとあなたのを作でございましょうね。」

フレスタコーフ 「そうあれは私の作です。」

アンナ 「私もすぐにそうだと思いました。」

マリア 「あら母さんでもあれにはザゴースキンさんの作と書いてありましたわ。」

アンナ 「そらね、お前はここへ来ても、楯突くに違いないと思っていましたよ。」

フレスタコーフ 「あ、そうそう、全くです。それは確かにザゴースキンの作です。しかし他にもう一つ『ユーリイ・ミロスラーフスキイ』ってのがあります。その方こそ全く私の作なので」

アンナ 「ではきっとあなたのお作を拝見したのでございましょう。まあ、なんて立派にできていることでございましょう。」

フレスタコーフ 「私も実を言うと文学で生活してるのです。私の住まいはペテルブルグ一番の家でしてね。イワン・アレクサンドルビッチの家と言ったら、もうそれで分かるのです。皆さんもしペテルブルグへおいででしたら、是非是非私のところへお寄り下さい。舞踏会もしょっちゅう開きますよ。」

出典:http://hallenna.narod.ru/gogol_revizor_il.html

 

次に第4幕、軽薄なフレスタコーフが純粋無垢な郵便局長へ返す当てのない借金を無心するシーンです。

フレスタコーフ 「あなたが私と同意見なので私は全く愉快です。よもちろん人は私を変人だと言う                                  でしょうが。私はこういう性格の人間でしてね。(ひとつこの局長に無視してみようかな。)いや実は妙なはずみでしてね、途中すっかり使い果たしちゃったんですが、一つ300ルーブリばかり貸してもらえませんか?」

郵便局長 「よろしゅうございますとも。身に余る光栄でございます。ではどうぞこれを、衷心からお役に立ちたいと存じておりますので。」

フレスタコーフ 「どうもありがとう。私は正直なところ旅で不自由な目をするのがたまらなく嫌なんです。そんなことをしたって何もなりませんからね。そうじゃないですか?」

郵便局長 「ごもっとも様で。」立ち上がり体をそらし片手で剣を支える。「いやあまりお邪魔をいたしましてはかえって・・・何か郵便局の事につきましてご注意はございませんでしょうか?」

フレスタ コーフ 「いや何もありません。」

局長、敬礼して退場。

フレスタコーフ 葉巻を燻らしつつ「局長か、あいつもやはりごく好人物らしいな。少なくとも親切だ。俺はあんな人間が大好きだ。」

出典:http://hallenna.narod.ru/gogol_revizor_il.html

 

同じく第4幕、商人たちの市長への反乱、フレスタコーフへの直訴です。

フレスタコーフ 「なんだいあれは、ゴシップ?あの騒ぎはどうしたことだ、ちょっと見てくれ。」

オシップ (窓から覗く)「なんだか商人みたいな連中が入りたがっているのですよ。ところが、巡査が入れないんでさあ。紙切れを振り回していますぜ、きっとあなたに会いたいんですよ。」

フレスタコーフ (窓から文書を受け取りその中の一本を開いて読む}「『財政長殿閣下、商人アブドゥーリン拝・・・』なんだいこれは。こんな官名なんかありゃしない。」「なんだね諸君?」

商人たち 「お慈悲をお願い申し上げます。」「どうぞ見殺しにしないでくださいまし、旦那様。手前どもは、罪咎もないのに憂い目、辛い目を見ているんでございます。」

フレスタコーフ 「誰だね相手は?」

商人の一人 「はい、みんなここの市長でございます。あんな市長は、旦那様、決して二人とあるものじゃございません。言葉にも尽くせないような辛い思いをしております。いつぞやは兵隊の宿をさせて酷い目に合わせますし、いっそ首でもくくった方がマシなくらいでございます。人間らしい所作はいたしません。人のあごひげをひん握って、『ええ、このタタール人め』とこうでございます。全く嘘偽りは申しません。これがもし仮にあの人をないがしろにする、とでも言うなら格別でございますが、手前どもはきちんと順序を踏んでいるのでございます。なに、あの方の連れ合いや、お嬢様のお召し代を差し上げるぐらいのことなら、手前どもは何も四の五の申すわけじゃございません。ところが、そんなことではまだまだ足りないので、へー、全くでございますとも。あの人が店に行きますと、なんでも見つけ次第に持っていってしまいます。まあ、ラシャの一反でも見ると、『これはいいラシャだ。わしの家へ届けろ』です。それで仕方なしに届けますが。そのラシャはもう50アルシン近くもあろうかという代物でございます。」

フレスタコーフ 「本当か、うむ、ひどい野郎だな」

出典:http://hallenna.narod.ru/gogol_revizor_il.html

 

続いて第5幕、市長の商人たちへの怒りの言葉です。

(商人たち登場)

市長 「こんにちは皆さん」

商人達 (会釈しながら)「ご機嫌よろしゅうございます旦那様。」

市長 「いかがです?皆さん、お変わりはありませんか?ご商売はいかがです・・・ええ、このサモワール屋め、告訴などするとは何事だ?大ボラ吹きめ、悪魔め、海賊め。告訴だって?どうだ、それで貴様たちは得をしたか?これであいつも牢の中にぶち込まれる・・・くらいに考えているのだろう・・・一体知っとるか、この畜生、悪魔、餓鬼・・・」

アンナ 「まあなんてことを、アントン、あなたなんて言葉遣いをなさるんですの」

市長 (不興げに)「いや、今は言葉などにかまっておられん。いったい知っとるか、貴様たちが告訴したあの役人の方は、今度うちの娘と結婚なさるのだぞ。どうだ?あん?今更言い分があるか?今こそ思い知らせてやるぞ。・・・貴様らは世界を瞞着しとる・・・貴様らはお上の請負をすると、腐れラシャを納めて10万ルーブリもごまかすのだ。しかもその後で20アルシンばかり人に奉納して、それでお礼まで言ってもらうつもりなのだ。」「貴様は『我々だって貴族にも負けぬな』どとほざいているが、貴族だって・・・この曲がりづらめ、貴族は学問を習ってるぞ。たとえ学校で折檻されたって、それはためになることを覚えるためなのだ。だが貴様らはどうだ。詐欺が修行の初めじゃないか。騙しようが下手だと言って主人に殴られるじゃないか。そうしてだんだんと腹が突き出して、懐が膨らんでくると、今度はそろそろもったいぶり出すのだ。貴様らは自分をどんな偉いものと思っているのだ。サモワールを1日に16も作るというので、それでもったいぶっているのか?わしは貴様の頭に、貴様のそのもったいぶりに唾を吐きかけてやるわ。」

商人達 (会釈しながら)「手前どもが悪うございました、アントン・アントーノヴィッチ」

出典:http://hallenna.narod.ru/gogol_revizor_il.html

 

いかがでしたでしょうか?ゴーゴリの喜劇作品『検察官』の面白いシーンが誇張されて描かれていましたね。このブログをお読みいただいてる方の満足度は測りかねますが、筆者自身が楽しいのでもう少しこのシリーズを続けます。次回もこうご期待。

 

参考資料

Иллюстрации ккомедии Н.В.Гоголя "Ревизор"
Иллюстрации к комедии Н.В.Гоголя Ревизор
Петербург Гоголя
Петербург в произведениях Гоголя, Петербург в русской литературе
Иллюстрации Боклевского и Кардовского к комедии Гоголя "Ревизор"
Иллюстрации Боклевского к комедии Гоголя ''Ревизор''

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