ロシアファッションヒストリー６５　ウクライナ特集　伝統的なウクライナ刺繍の霊性４

ロシアファッションブログです。前回はウクライナ特集としてウクライナの伝統的な刺繍などを使ったファッションブランドを紹介しました。こうしたブランドはまだまだ数多くありますので、今回もいくつか取り上げようと思います。

ヴィータ・キン（Vita Kin)

ウクライナ人のヴィータ・キンは世界的に有名な刺繍ドレスのデザイナーおよび作者​​であり、ウクライナ人デザイナーとして初めて国際的に認められたデザイナーとしてその地位を確固たるものにしています。

数年前、ヴィータは写真家でしたが、自分のスタジオを探し始めたときから彼女の成功物語は始まります。部屋は見つかりましたが、その写真スタジオはあまり人の出入りは多くなかったようです。スタジオに来たデザイン関係者の会話を耳にしたとき、ヴィータとそのファッション関係者の女性が意気投合し、服のまずはブランドIritaを設立しました。

最初のコレクションは1970年代頃で、オジークラーク風のドレスや、ビートルズが着ていた軍隊風のユニフォームのようなものでした。

2008年のリーマンショックによる経済危機の間に、パートナーは解散することを決めたため、Iritaの代わりにVita Kin for Kindomというブランドを独自に立ち上げました。

2013年、ダハブラバンド(ДахаБраха)のコンサートで、ヴィータはその衣装に触発され、ウクライナ刺繍のとりこになり、デザインのモチーフとして取り入れました。

ヴィータは、ウクライナのさまざまな地域の文化を学び、ソロチンスキーの見本市に行き、骨董品店を訪ね歩きました。またウクライナの刺繍入りシャツの膨大なコレクションを集め、デザインの開発を自ら担当しました。古いスタイルを修正し、時代に適応させ、彼女自身のコレクションのパターンを開発し、自分たちウクライナ人にどの程度似合うかを理解するために自ら試着しました。こうした努力が実り彼女のブランドは国内外で認められるにいたりました。

2014年、ウォールストリートジャーナルは、ヴィータ・キンの刺繍ドレスをその年で最も人気のあるサマードレスにとして採りあげました（上の画像）。他にも多くのファッション雑誌に掲載され、大規模なグローバルな小売業者の間でそれらを販売する権利の争奪戦となったほどです。たとえば、あるファッションポータルの Webサイトでは、刺繍シャツの全てが30分で売り切れになった記録があります。それほど人気の高かったヴィータ・キンの作品をもう少し見てみましょう。

フォベリーニ　（Foberini）

フォベリーニ（Foberini）は、2015年に設立されたウクライナのいわば現代民族衣装のブランドです。ドレスやブラウス、シャツを飾る装飾品は、ウクライナの民俗博物館や個人コレクションにあるものをモチーフとし、それらの象徴する意味を探求していこうという姿勢が鮮明です。

製品の特長としては、現代の技術と手縫いの装飾要素という古代からの技術が組み合わされていることです。

専属モデルに2017年ミス・ウクライナを起用しています。

眠るジプシー（Sleeping Gypsy)

ウクライナのブランド　眠るジプシー（Sleeping Gypsy)は、ウクライナ伝統の刺繍が施されたモダンなドレスやブラウスのブランドです。

このブランドの特徴は、ブランド価値をスタイルと耐久性に置いており、他の多くのライバルとは異なり、製品に神聖な意味やお守りというスラブの霊性を強調しません。

すべてのデザインは、アーティストのアレクサンドラ（Alexandra Kudryavtseva）が著作権を所有しています。彼女はスラブの霊性はことさら強調しませんが、一方技術面、つまり伝統的なウクライナの縫製技術を積極的に使用しています。すべての刺繍入りブラウスにはマチがあり、「パッファー」技術という昔ながらの縫い方で製品が組み立てられています。

素材にもこだわりがあり、ウクライナ産の亜麻のみが認められている素材で、糸は品質の観点からドイツ製のものを使用しています。

コレクションは季節限定ではありませんが、新しいモデルが毎月リリースされます。男性用モデルはルーチンでは生産されませんが、カスタムメイドのシャツは、女性のドレスのパターンを繰り返す刺繍で作られることがあります。多くの場合、そのような注文は新婚夫婦が依頼するものです。

現在、このブランドはキエフとニューヨークにショールームがあり、ドバイ、オーストラリア、そして東京でも購入が可能です。

いかがでしたでしょうか。伝統的な絵柄の応用が、現代的なシルエットと相まって本当に奥深い表現になっていますね。どれも伝統の力を発揮した素晴らしいデザインだと思います。

参考としたURL