ロシア民族衣装のお店キリコシナ
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ロシアファッションヒストリー40 ソビエトの紳士ファッション

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マヤコフスキー、当時話題を呼んだ黄色いシャツ 出典:Public Domain
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ロシアファッションヒストリーのブログです。これまではロシア、ソビエト連邦時代のファッションの内、女性ファッションを中心に紹介してきました。今回から数回にわたって紳士ファッションについて紹介したいと思います。

1917年以降のソ連時代の紳士ファッション

前回ではソビエトにおける女性ファッションの負の部分をお伝えしてきましたが、ソビエトの男性のファッションはさらに寂しいものでした。多くのロシアの服飾評論家は、「革命後に国を支配するようになった男性は、ほとんどの場合、文化的な人々ではなく、発達した美的感覚がなく、芸術に興味がなく、衣服の好みが全くなかった。これが、メンズファッションの発展を許さない決定的な要因だった。」という立場をとっています。けれどもブログ筆者は上述のような論には懐疑的です。ソビエト社会主義の中枢にいる人でも、ファッションや自由な芸術に興味があった人は必ずいるはずで、本当ならほとばしるファッションや芸術への希求さえも、全体主義が押しつぶしてきたと理解すべきではないでしょうか。だってスターリンに粛清されてしまいますから。

1921年英国風のスタイルのロシア人男性(左)
出典:https://club.osinka.ru/topic-180010?start=0

 

理由はともあれ、ソビエト時代の紳士ファッションは世界に誇るべきものではなかったことは事実でしょう。確かに、ソビエトの指導者レーニンはすべての肖像画で同じ青と白の斑点のネクタイで描かれていましたし、現代のプーチン大統領のファッションセンスとは全く違いますね。

出典:https://ru.delfi.lt/abroad/russia/times-putin-snova-v-mode-posle-prisoedineniya-kryma.d?id=65051875

 

写真や肖像画にあるレーニンの服は、ほぼ1910年代の古典的な紳士服です。違いは1つだけで、「ブルジョア」風の帽子があるとき「プロレタリア」使用のキャップに置き換えらただけです。

左端がレーニン
出典:Public Domain

革命キャップをかぶったレーニン
出典:Public Domain

興味深いことに、キャップ自体は「プロレタリア」の発明ではなく、西側の敵国アメリカ合衆国からきたものですが。

 

マヤコフスキー

ソ連共産党における、国家的な詩人マヤコフスキーは厳しい体制下、例外的に自身のファッションセンスを堅持した人です。彼は外国の、しばしばアメリカ人の衣装を着ており、彼の時代の男性ファッションの象徴でした。長い間、マヤコフスキーはイヴ・サンローランがあこがれていた男性像であり、アイドルでした。実際には彼らは個人的には知り合うことはありませんでしたが、彼の肖像画はイヴ・サンローランの家に掛けられていましたし、マヤコフスキーの元恋人とイブ・サンローランは友人関係になっています。

マヤコフスキー
出典:https://www.factroom.ru/istoriya/posledstviya-revnosti-s-kem-podralsya-mayakovskij-iz-za-lili-brik

マヤコフスキー出演の栄華「若い女性とフーリガン」の1ショット
出典:Public Domain

マヤコフスキー、当時話題を呼んだ黄色いシャツ
出典:Public Domain

 

革のジャケット

ソビエト紳士ファッションの中に特殊な位置を占めるのが革のジャケットです。特に、軍特殊部隊や秘密警察などど密接に関連しているイメージがありますね。

ソビエト軍と革のジャケット
出典:https://novate.ru/blogs/140419/50085/

さてここで疑問が生じます。革のジャケットがKGBやソビエト軍特殊部隊に登場するのは革命後まもなくなのですが、革のジャケットはふんだんにありました。革命前後は経済困窮が著しかったのに、なぜこれほど大量に革のジャケットが用意できたのかです。

出典:https://novate.ru/blogs/140419/50085/

実際には、これらの革のジャケットは革命後に生産されたものではありません。実は革命前の第一次世界大戦中に、空軍の航空隊のために作られたものが戦争終結とともに大量に在庫され、それを利用しただけなのです。、ユニフォームとしてKGBや軍に引き渡されました。

また、革のジャケットに限らず、革命の際ブルジョワたちから接収したコート類も、形や色がオーソドックスであればこれらは戦闘用や公務員用の制服の代替に使用されています。実は革命直後の軍隊や各組織の制服は経済的理由もあって、必ずしもソ連全国的な統一は見られていなかったのです。

「ブルジョア」から接収した外衣を着る食品調査委員会のメンバー、1921年
出典:https://club.osinka.ru/topic-180010?start=0

そして帽子、ブデノフカと呼ばれるものですが、これも革命の象徴です。でもこの帽子の出自もやはり、革命前のことです。ブデノフカは、第一次世界大戦中に芸術家ヴァスネツォフによって、新しい皇帝軍のヘルメットのモデルとしてデザインされ、その後大量に縫われて倉庫に眠っていました。そしてソビエトの指導者はこれをそのまま利用し、例の赤い星だけを縫い付けたのです。

ブデノフカをかぶったフルンゼ
出典:https://zen.yandex.ru/media/dighistory/budenovka-simvol-krasnoi-armii-5a36c93cc5feaf802d288304

ブデノフカをかぶったスターリン
出典:https://zen.yandex.ru/media/dighistory/budenovka-simvol-krasnoi-armii-5a36c93cc5feaf802d288304

 

スターリン時代のソビエトにおける紳士のファッション

1920年 のソビエトレーニン時代と比べて、1930年のスターリン時代はどうだったのでしょうか。鉄のカーテンを引いたくらいですから、それはさらに暗くなったのでしょうね。スターリンはいつも写真に写っている誰もが知っている軍服のジャケットを着ていました。ブルジョアの象徴として、ネクタイの論争を繰り広げ、公的な場からはネクタイが消滅します。そして、何しろより地味なものが推奨されるようになります。

スターリン
出典:Public Domain

ニットウェアは、男性のワードローブの中にしまい込まれ、セーター、スカーフなど 当時の男性のファッションでの会話に出てくることは想像のできないことで、社会的なタブーとも考えられていました。あらゆる種類の帽子がついに前述のプロレタリアに置き換えられました。そんな時代です。

さて、ではここでソビエト、その後のロシアの紳士服の歴史は閉ざされてしまうのでしょうか?そんなことはありませんね。男性でもファッションの希求がこの世から消えるはずもなく、古代から連綿と継承されてきたわけです。

次回はそんなお話を展開したいと思います。

 

参考文献およびウェブサイト(すべてロシア語です)

https://www.rbth.com/arts/328686-5-russian-queens-of-silent-cinema

https://weekend.rambler.ru/read/38912877-kak-russkie-emigrantki-diktovali-mirovuyu-modu/?updated

https://www.rbth.com/arts/328686-5-russian-queens-of-silent-cine

http://lamanova.com/16_competitors.html
https://russian7.ru/post/kak-poyavilas-kosovorotka-u-russkikh/
https://vrns.ru/analytics/1394

https://club.osinka.ru/topic-180010?start=15
・R.V.サハルジェフスカヤ「衣装の «歴史:古代から近代へ
・カミンスキーN.M.「コスチュームの歴史」
・Далю(ダーリョ)「Толковый словарь живого великорусского языка」

https://vladimirdar.livejournal.com/34227.html

https://www.proza.ru/2016/03/06/208

https://wiki.wildberries.ru/%D0%B3%D0%BB%D1%8F%D0%BD%D0%B5%D1%86/%D0%B8%D1%81%D1%82%D0%BE%D1%80%D0%B8%D1%8F-%D0%B6%D0%B5%D0%BD%D1%81%D0%BA%D0%B8%D1%85-%D0%B6%D1%83%D1%80%D0%BD%D0%B0%D0%BB%D0%BE%D0%B2-%D0%B2-%D1%80%D0%BE%D1%81%D1%81%D0%B8%D0%B8-%D0%B6%D1%83%D1%80

https://www.rbth.com/arts/328686-5-russian-queens-of-silent-cinema

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