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ロシアファッションヒストリー31 ゲルダン

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ロシアファッションヒストリーをシリーズでお届けしています。今回からロシアやウクライナの民芸品、そして装飾品のゲルダンを紹介します。本来はサラファンなどに合わせる大きめなネックレスというものですが、その豊かな装飾性とスラブの雰囲気を大きく醸し出す押し出しから、現在のコスチュームにもよく合うため、今でもスラブ女性に愛されているアクセサリーアイテムです。

出典:https://postila.ru/

出典:https://pikabu.ru/story/gerdan_gzhel_5254070

ゲルダンはビーズで作られています。ゲルダンに限らず、ビーズはロシアのファッションの歴史に欠くことのできない素材です。ではゲルダンの歴史に入る前に、まずビーズのお話から始めましょう。

ビーズの歴史

「ビーズ」という言葉は、アラビア語の「ブスラ」(偽造真珠)に由来する可能性が指摘されています。9あるいは10世紀当時のビーズは溶融したガラスの塊を金属棒に巻き付けて製造されていました。古代エジプトの装飾職人によって使用され始めたのが起源です。その後にローマ帝国ではガラス吹き工法をガラスビーズに適用しました。更なる技術向上を経て、13世紀にヴェネツィアにおいて透明な高品質のビーズ生産ができるようになりました。次の3世紀にわたって、ベネチアンビーズは当時最も影響力のある人々の衣装を飾っています。16世紀になって、ボヘミアがベニスの競争相手となります。フレデリック2世の戴冠式の際の手袋にはビーズが刺繍されており、ルネサンス期の女性は、ビーズが刺繍されたベールで頭を覆っていました。

フレデリック2世戴冠式の装飾
出典:http://baba-deda.ru/news/3172

ビーズの装飾されたベール
出典:http://baba-deda.ru/news/3172

 

ロシアのビーズ

ロシアでのビーズは、ロシアの北西部の古代都市、スタラヤ・ラドガの考古学的な土壌の発掘中に、9〜10世紀の層に発見されました。ただし、研究者はそれがどのように使用されたかを推測することしかできません。いずれにせよ、ラドガの裕福な住民はビザンチンの商品、特にビーズを購入することができたということはわかりました。ただし、ロシアで製造したものである可能性は低く、おそらく戦利品が売られていたものであろうと推測されています。さらにその後キエフでの発掘作業中、13世紀の層のに、約1500個のクリスタルビーズとカーネリアンビーズが入った容器が見つかりました。これは、その時点での工芸品としてのビーズの生産が存在したことを意味しています。

キエフ発掘のビーズ
出典:http://baba-deda.ru/news/3172

 

ロシアの人々がビーズ細工への強い関心を示し始めたのは16世紀です。1753年にM.V.ロモノソフ氏の出資を得て、レニングラード地方の今では廃村となったウスチ・ルディツェに初めてガラス工場が設立されました。以前ビーズがボヘミア王国(今のチェコ)で購入されていた価格と比べ、ロシアで生産できるようになってからはより手頃な価格の製品になったはずです。したがって、職人の数も製品もこの時大幅に増加しました。その後ビーズは、衣装の装飾や、アクセサリー、室内装飾品など、種々の装飾のための素材となりました。

当時ロシアではどのようにビーズが使われたかを絵画で類推することができます。ロシアでは農奴制が敷かれていた時代が長いですが、その農奴の出身である画家M.シバノフの絵画にに、大きな光るビーズで飾られた女性の帽子が見えます。

シバノフの絵画
出典:http://baba-deda.ru/news/3172

 

「結婚式の契約のお祝い」の絵の中心的な人物である未婚の少女自身は、ビーズ細工の付いた頭飾りをつけていいないものの、おそらく仲人と思われる別の女性はビーズのついた頭飾りを着用しています。

シバノフの絵画
出典:http://baba-deda.ru/news/3172

 

もう一人のロシアの画家G.ヴェネツィアノフの絵画には、農民が可能な限りリアルに描写されていますが、ビーズを下げた女性の帽子はほとんど見られません。日常の描写では女性は平凡なブラウスに、ショールが描かれています。ただし、次の2枚の絵画は女性の正装を描いたものであり、これらの衣装にはネックレスや指輪が合わされています。よって真珠やビーズが付いた高価なアイテムは、休日や行事だけに着用された可能性が高いと考えられています。

ヴェネツィアノフの絵画
出典:http://baba-deda.ru/news/3172

ヴェネツィアノフの絵画
出典:http://baba-deda.ru/news/3172

 

ビーズのココシュニック

ロシアのさまざまな地元の歴史博物館の展示品を検索すると、ビーズの下げが付属したココシュニックを大量に見つけることができ、19世紀に膨大な種類があったことがわかります。ほとんどの場合、白または半透明のビーズで織られたメッシュです。ロシアの習慣として、既婚女性の頭飾りは頭を完全に覆う必要があったので、頭の後ろを覆う部分も全体と同じ豊富なビーズから作られる贅沢なものも見つかっています。

ビーズ装飾のココシュニック
出典:http://baba-deda.ru/news/3172

 

ロシア各地域の特色

ロシアの地域地域で特色のあるビーズ装飾を見ることができます。スベルドルフスク地方では、髪飾りのビーズが特色で、大きく幅の広いビーズの縁取りで飾られています。

ビーズの縁取り
出典:http://baba-deda.ru/news/3172

ビーズの縁取り
出典:http://baba-deda.ru/news/3172

 

ペルミ地方

ペルミ地方では、距離的に近いハンガリーのモチーフに基づいて作成された衣装などに、頭飾りのビーズが合わされます。衣装の方の基本は刺繍であり、ビーズを使用することはありません。ただし頭飾りの模様は、衣装の模様を模したものであり、ハンガリーの帽子と通づる特徴があります。

ペルミ
出典:

 

クラスノヤルスク地域

ビーズで装飾された製品をアップします。一般にここに示したヘッドバンド類は、ロシアの他の地域では布を編んで作られます。ただし、クラスノヤルスクでは、ビーズが飾られたり、ビーズが織られたりするものが多いのが特徴です。

クラスノヤルスク
出典:

 

さてこれまで、ゲルダンの基礎となったビーズ装飾という観点で話を進めてまいりました。次回次回はいよいよ本題のゲルダンについて話を深めてまいります。

 

参考文献およびウェブサイト

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