今日はJarucoのロシア語・日本語バイリンガル教育に関するお話です。まずは日本における日露バイリンガルの一般的な課題を挙げますと、日本人のだんな様とロシア語圏の奥様の間のお子様へのロシア語教育となりましょう。さらに、お子様が日本の幼稚園、保育園、あるいは小学校、中学校に通われていて、日本語が母語かつ第一言語であり、ロシア語は第二言語であるもののネーティブレベルにはなっていない、あるいはネーティブレベルではあるものの今後の発達に不安を感じている、と言う内容のご相談が最も多いものです。この点、日本人同士のご夫婦が将来のお子様の国際性の醸成のために、英語をネーティブ並みにしたい、と言う願望に比べ、教育目標としてのレベル感の把握も容易ですし、第二言語習得のための環境整備という点からも容易なケースを扱っていると考えています。
とは言っても、ご両親の考える語学レベルや、習得後のロシア語をどう活用してお子様の人生を豊かにしていくかについての希望や夢をお伺いし、我々Jaruco教師陣がそれらをお子様と共有していくことは、目標レベルのロシア語習得のためにも重要なことです。そして、現在のお子様のバイリンガルとしての状態をより客観的に認識し、定性的、定量的な目標を定めることが効果的なバイリンガルの育成に必要であると認識しています。以上の観点から、Jarucoで利用しているバイリンガルの分類について少し説明します。
バイリンガルの分類は我々が把握しているものだけでも10ほどあり、これらはどちらが正しいと言うよりも分類する方法、あるいは視点が異なると言う意味で、もともと優劣のつくものではありません。目標達成の上でよりふさわしい方法で分類してみて、現状を把握すると言うのが分類法の活用方法です。まず重要な3つの分類法を説明しますと、
1.二言語の能力差による分類:
二重バイリンガル(均衡バイリンガル): 2つの言語を母国語レベルに同等に使うことができる場合
偏重バイリンガル:2つの言語のうちどちらか片方が優勢な場合
2.言語習得の時期による分類
早期バイリンガル(同時バイリンガル):2つの言語を同じタイミングで習得した場合
非早期バイリンガル(継続バイリンガル):2つの言語の学習時期にずれがある場合
3.聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能の発達の差異に着目した分類
聴解型バイリンガル:「聞く」ことのみができる場合
会話型バイリンガル:「聞く」「話す」ができる場合
バイリテラル:「聞く」「話す」「読む」「書く」が満遍なくできる場合
このように分類していくと、将来お子様をどのようなバイリンガルに育てたいか?、どのようなバイリンガルを目標とすれば、無理なく、かつお子様の夢をかなえられる可能性を高められるのか?を具体的にイメージできるのではないかと思います。
上記以外に
言語能力(創造性) | 産出バイリンガル | 受容バイリンガル |
言語能力の変化 | 上昇バイリンガル | 後退バイリンガル |
構造概念として | 複合型バイリンガル | 等位型バイリンガル |
習得開始時期 | 早期バイリンガル | 後期バイリンガル |
母語との関係 | 付加的バイリンガル | 消滅的バイリンガル |
習得時の環境 | エリートバイリンガル | 大衆バイリンガル |
などがあります。見方によっては差別的だと感じる表現もあり、Jarucoではこれらすべてを積極的に分類に取り入れているわけではありません。ただし、世の中の人の動きを見ると、今や国境を意識することなく多文化が交流しており、応じてバイリンガル研究が今後も加速度的に発展することは明らかです。よって、これらの研究結果には常に注目し、教育の中に取り込んでいく姿勢が、バイリンガル教育者には欠かせない資質となるでしょう。