今年の7月24日から8月9日にかけてロシアのカザンで世界水泳大会が行われています。昨年のソチ・オリンピクに続きロシアで行われるスポーツの世界大会です。基本的に今回の会場として2013年夏季ユニバーシアードのために建設されたものが利用されますが、川で行われる競技のために、カザンカ川の川底が掘り起こされ、4メートルの深さにするなどの大規模な工事も行われました。ロシアって何事にもスケールが大きいと感じさせてくれますね。
では今日のロシア語を見てみましょう。以下はシンクロナイズドスイミングの記事です。
Российские синхронистки Светлана Ромашина и Наталья Ищенко с программой “Инопланетяне” набрали 97,26 балла. Вторыми стали китаянки Хуан Сюэчэнь и Сунь Вэньянь (95,46), третьими — японки Юкико Инуи и Рисако Мицуи (93,53).
РИА Новости http://ria.ru/sport/20150728/1151726294.html#ixzz3hGGr56HU
シンクロナイズドスイミング、ロシア語でсинхронное плаваниеです。この競技の男性選手はсинхронист, 女性選手はсинхронисткаと言います。記事の中に2名の女性選手の名前が出てきます。スベトラナСветланаとナタリアНатальяです。主語は「ロシアの選手」の複数主格で、российские синхронисткиとなります。名詞と形容詞の語尾変化がポイントです。
述語を見ましょう。набратьは完了動詞「集める」の意味で、-ть が-лиに変わっていますから過去形です。因みに不完了動詞はнабиратьです。続いて点数を表す男性名詞баллが数字とともに現れていますが、単数生格の-аがついてбаллаとなりました。単数生格を取るのは前の数字が小数点を含む数字だからです。ところでлを1つ取ったбалは「舞踏会」で、意味は全く異なりますので注意しましょう。
外来語のпрограммаはそのまま「プログラム」の意味です。ロシア語では演技者が何か受賞したときには、演技者を主語とし、受賞した演技を前置詞c+造格で表します。前置詞сと造格の語尾-ойを使っていますс программой。プログラムの内容が“ ”の中に書かれておりПланетаは「惑星」、инойあるいはдругойは「他の」を示す接頭辞、-нин- は例えばроссиянинの様に国籍を表す接尾辞ですから、инопланетянинの複数Инопланетянеは「宇宙人」です。
では最初の文章の露日訳をしましょう。「ロシア選手スベトラナ・ロマシナとナタリア・イシェンコがプログラム「宇宙人」で97,26点を取った。」です。
日本人にとって少し奇異なのは「優勝した」победилиや「一番になった」заняли первое местоなど「最も良い」самые лучшиеという含意をせず、点数のみ示しているのはなぜでしょうか。これはロシア人独特の婉曲表現と捕らえていいと思います。ソ連時代、連邦を構成するウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンなど多くの民族を抱えながら、ソ連邦内の種々の競技会がありました。その結果をいちいち、「ロシアが一番」と言っていたのでは、連邦としての一体感が生まれません。そのため、敢て「誰々が優勝」と明言することなく、点数のみを伝えおのずと順位がわかるという表現が生まれたと推察されます。
では残りの部分については次回見て行きましょう。