ロシアファッションブログです。前回はスラブの儀式として、結婚式を紹介しました。今回も、様々なスラブ様式の儀式を紹介していきます。
新築にかかわる儀式の数々:
古代スラブ人による家の建設は、悪霊を防ぐための儀式と関連していました。家の新築時の最も危険な時期は、新しい家に移り、その中で生活が始まる直前と考えられていました。「汚らわしい力」が、新たな住人の将来の幸福を妨げられるかもしれないという不安がありました。これらの新築の儀式は、19世紀半ばまでロシアの多くの場所で古代の神秘的な儀式のまま保存されていました。
場所探し
家を建てるということは、建築の場所と建材を探しから始まります。19世紀の民族誌データから判断すると、家の場所を選択するときから、多くの魔術的な方法がとられました。
例えば、クモのついた鋳鉄が現場に置かれ、そしてそのクモが一晩のうちに巣を織り始めたなら、これは良い兆候と考えられました。
また、候補のいくつかの場所で、小さな穴に蜂蜜の巣が置かれました。そして、鳥がそれに入るならその場所は幸福を呼ぶと考えられました。
他には安全な建設場所を選択する目的で、スラブ人たちは最初に牛を外に出し、それが地面に横たわるのを待ちます。牛が横たわった場所は未来の家の安全が保障された場所と考えられました
そして、もうひとつの方法として、異なる土地から4つの石を集め、四角形にそれらを地面に置き、その中の地面に帽子を置き、おまじないを唱えました。この後、3日間たっても、石がそのまま残っていれば、その場所は住むのに適当な場所と考えられました。
ベラルーシ人は、家はいさかいのあった土地に建てられるべきではないという強いしきたりを守ります。なぜなら、それは敗者の側に破滅をもたらす可能性があり、そのような土地の新しい所有者は永遠に幸せを見ることはできないと考えたからです。
また、スラブの村では人間の骨が発見された場所や誰かが腕や足を切り取られた場所に家が建てられることはありません。これは日本でも、どこでもそうですね。単に気持ち悪いから。
さて家を建てる場所が決まりました。以下はそのあとの儀式です。
新しい家への引っ越しに関連する複雑な儀式
土台となる丸太を置く前に、コインが「富のために」部屋の角に埋められました、お香がコインのそばに置かれ、土地が清められます。そして丸太小屋の建設後、鶏をしめ、四隅に血を吹きかけます。そしてこの鶏がドアの下に埋められることにより、スラブ民族の家の神である「ブラウニー」は家とその住人を守ってくれると信じられました。
新しい小屋に移動するとき、汚れた力が将来の幸福を妨げようとしたと信じられていました。その悪霊をだますために、最初に猫を家に入れました。また、猫はブラウニーが目に見えない形で家に入ると信じられていました。
すべてが順調であれば、その後鶏を飼い始め、3日目には豚を飼いました。さらにその翌日には羊、牛、馬を連れてきました。人はまだ移ってきません。鳥や豚は非常に敏感なので、所有者に「良い」場所かどうかを示すと考えられていたからです。そして、7日目になってやっと人が入ってくるのです。
最初に家に入る人は、新しい場所に存在する可能性のあるすべての悪を自分自身に引き継ぐ覚悟を持って入ります。家族の中に病を持つ老人がいれば、彼ら自身が最初に入ることを引き受けました。そうした自己犠牲的な老人がいなかったら、悪魔や神を信じない見知らぬ人を招きます。そして、お金があればスラブの神を信じないドイツ人の薬剤師や医者を招くという方法がとられたほどです。
やっとその家の主人が入る際にも、慎重に慎重を重ね、イコン(ロシア正教のハリストあるいは賢者の絵)とパンと塩を持って夜な夜な家に入っていくのです。日本と同様、ロシアでも塩はお清めのために使われるんですね。
スラブの言い伝えによると、場所によっては、悪霊は夜に人が引っ越してくることを予想していないため、夜の引っ越しすることが安全であると考えられていました。またほかの場所では、早朝か、日の光が豊かな正午に引っ越しするところもあります。こちらでは強い光が、幸運をもたらすと考えられていたからです。
引っ越してからは、部屋の隅にアイコンを置いて、家族全員がその前で洗礼を受けました。それから一家のお母さんはパンの塊を切り、それをペチカの下に置き、家の神ブラウニーを歓迎しました。
19世紀半ばまで、古代スラブの儀式はロシアの多くの地域でまだ保存されていました。特に、面白いものがあります。夜明け前にその家のお母さんは着物を脱いで(つまり素っ裸で、けれども誰にも見られないように)、新しい小屋を回って呪文を唱えます。お母さんは門から3回家をまわり、「新しい家の住民を増やしましょう」と言い、子宝を願ったのです。
家と同時にバーニャ(ロシア式サウナ)が建設されていた場合、最初の入浴の前にバニク(浴場の悪霊)を鎮める儀式が行われます。東スラヴでは、木製の風呂に住む悪霊と考えられています。彼は目に見えませんが、ほうきの葉で覆われた、小さな汚れた長髪の老人の形で現れることも、女性や動物の装いであらわれることもあります。バニクはいたずら好きで、女性を怖がらせたり、熱湯を浴びせたり、熱い石を投げかけたりしますが、もっと攻撃的になることもあり。日没後に大浴場に来る人は、首を絞められたり、皮膚が引き裂かれたりすると考えられていました。
バニクを鎮めるため、住人は黒い鶏を絞め殺し、浴場の地下に埋めました。多くのスラブの場所で、この儀式は新築当日に限らず、聖木曜日の夜に定期的に行われました。塩をまぶしたライ麦パンもバーニャに飾られます。
以上が新築の儀式です。日本にも、建前とか、地鎮際とかありますね。
ところで、最後に悪霊が出たところで、次回はバニクを含むスラブ4大悪霊の他の3悪霊を紹介しましょう。
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