ロシアファッションブログです。このブログは主にロシアファッションに関しての記事をお届けしています。これまで、とくにルパシカやサラファンなど、古いスラブ民族衣装の話題に際して、これら衣装や用いられる絵柄がスラブ古来の儀式に関連していることをお伝えしてきました。
今回、スラブ民族衣装の背景となる文化の理解を深めるために、スラブ古来の儀式についてまとめようと思います。
ソ連共産主義の時代、その反宗教イデオロギーから、キリスト教に関する宗教的儀式も、古くから各地で続いていた異教であるスラブの儀式も撤廃されてしまいました。しかし近年、スラブ文化の回顧とともに儀式そのものも復活させようとの機運がスラブの国々で高まりつつあります。
われわれ多神教文化の日本人にとって、スラブの異教の文化は同じ多神教であるという背景から似通った点が多く、自然の中に住んでいるそれぞれの自然の神々の姿や言葉、そして昔話や儀式に、その類似性を見ることができます。
古代スラブの儀式を見ていく前に、まずスラブの暦の各月の呼び名を見ていきましょう。日本の旧暦の月名と比較すると、これら文化の似ていることがよくわかります。
まずは、現在の世界共通のカレンダー(太陽暦、グレゴリオ暦)についてですが、英語ならば、January,February, March,・・・ スペイン語ならば Enero, Febrero, Marzo,・・・ロシア語なら、Январь февраль март・・・のカレンダーについてその成り立ちを紹介します。
ローマ人は元々、現在の3月に始まり12月に終わる10か月の旧暦を採用していたんですが、ちなみに、これは現在の月の名前でも示されています。
ロムルス暦(旧暦)
月 | ラテン語 | 由来 | 日数 |
---|---|---|---|
1の月 | Martius(マルティウス) | 軍神マルスに語源を持つ | 31日 |
2の月 | Aprilis(アプリリス) | 「花開く(Aperio)」に語源を持つ | 30日 |
3の月 | Maius(マイウス) | 豊穣の女神マイヤに語源を持つ | 31日 |
4の月 | Junius(ユニウス) | 結婚の女神ユノーに語源を持つ | 30日 |
5の月 | Quintilis(クインティリス) | 5番目という意味の「Quinque」から | 31日 |
6の月 | Sextilis(セクスティリス) | 6番目という意味の「Sex」から | 30日 |
7の月 | September(セプテンベル) | 7番目という意味の「Sept」から | 30日 |
8の月 | October(オクトーベル) | 8番目という意味の「Octo」から | 31日 |
9の月 | November(ノウェンベル) | 9番目という意味の「Novem」から | 30日 |
10の月 | December(デケンベル) | 10番目という意味の「Decem」から | 30日 |
グレゴリオ暦の最後の月の12月はラテン語の「10番目」を意味する「デカ」(deca)に由来します。しかし、伝説によると-皇帝Num PompiliaまたはTarquinia I(Ancient Tarquinia)の下で、ローマは355日の暦を採用し始めました。それを実際の季節に合わせるために、追加の月が追加され始めました。しかし、それでも、自然な気候とまったく一致しなかったため、最後に、紀元前46年にジュリアス・シーザーによって整えられました。彼は365日の暦を導入し、4年ごとに1日を挿入しました。そしてJanuaryを年の初めに設定します。因みにCalendarという語は、ローマのジュリアス・シーザーが語源です。
最初の6か月は、ローマの祝日にちなんでつけられた2月のFebruaryを除き、ローマ(イタリア)の神々にちなんで名づけられました。7月と8月はアウグストゥス帝の時代までクインティリス(第5)とセクスティリス(第6)と呼ばれていましたが、ジュリアス・シーザーとアウグストゥスに敬意を表してJulyとAugustと命名されました。。9月以降は旧暦の名残、つまり9月、Septemberは「7、セプト」が、10月、Octoberは「8、オクト」が、11月、Novemberは「9、ノベム」が、そして最後に12月Decemberは「10、デカ」が残ったわけです。
それでは、スラブ呼称の12か月を見ていきますが、日本の旧暦の月名と比較してみましょう。なお、スラブの月の呼称は地域や時期でいくつもあり、解釈も学者によって異なりますので、以下取り上げた説明はごく代表的なものとしてご理解ください。
1月:
日本では、睦月(むつき)で 皆仲睦(むつ)まじくお正月、という意味。年の最初の平和を祈願する気持ち、といったところでしょうか。
ロシアの暦では、Просинец(プロシネッ):これは「青い空」を意味することばで、灰色の空が青く晴れ渡る日が来た、という意味です。もちろん暗い冬はまだ続くのですが、春の兆しという意味でしょう。ちなみに、1月21日には、スラブ地域で「プロシネッの祝日」が祝われます。ウクライナ語では “сечень”で「スライス」という意味を有し、一般的な考えによると、1月に必ず起こる冬の分岐点、または冬が2等分されるとき、つまり春への転換点と考えられます。
2月 :
日本は、如月(きさらぎ) 衣を更に着る「着更着(きさらぎ)」から。寒さ本番、ですね。
ロシアでは”сечень”または”лютый””。前者は「セクション、分離」または「スノーフレーク」を意味し、空気をつんざく吹雪を意味します。またウクライナでは、15世紀からポーランドから来た呼び名を使い、後者の「激しい」を意味する言葉を使い、2月の激しい吹雪を想起させます。こうした命名は、2月の日本の旧暦名が、寒さから来ているのとよく類似します。また、ロシア北部と中部の開拓者たちは、今でも「側面を温める」という意味の語を使うことがありますが、これは、少し暖かくなって、牛が厩舎から出て太陽の下で側面(おなか)を温められるようになる時期、あるいは人にはまだ寒くてペチカの側面を温めなければならない時期が語源になっているという説もあります。
3月
日本では、弥生(やよい)。 草木がいよいよ(=弥)生えてきた、の意味です。
ロシアでは”сухый” または”березозол”。それぞれの意味は「乾燥」「白樺の目覚め」ですが、前者は、北部地方の呼び名で、湿気が無くなる春の音連れ、後者は南部の呼び名で、白樺の春の状態を表しています。植物を介して表現するところはよく似ています。
4月
卯月(うづき): 初夏の花、卯(う)の花が咲いた。
”березень”または ” снегогон”:前者は「白樺」で、後者は「雪だるま」を意味しますが、これは春になって、小川や野原の所々にある雪の残骸を意味します。
5月
日本の皐月(さつき)は、 田に早苗(さなえ=若い稲の苗)を植える早苗月からきている。
ろしあでは”травный”と言い、「草」を意味します。日本と異なり、稲を意識しているわけではありませんが、植物の息吹という意味では全く同じですね。
6月
日本は水無月(みなづき)。 夏で水が枯れてしまった・『水の月』(つまり梅雨)がなまったいう説もあります。
”Изоком”、”червень”:前者は「バッタ」、後者はウクライナで使われ、「芋虫」を意味します。さらに、古代では、6月は「火」という意味の言葉が用いられる地域もあります。こちらは、水無月と共通するイメージですね。虫の方は、日本の古来の月名とは異なっていますが、俳句の季語辞典を見ると6月の季語に「蛍」、「ゲンゴロウ」、「あめんぼう」などの虫が出てきます。
いかがでしたでしょうか。自然豊かなロシアと日本、情緒豊かな国民性がのあらわれた暦ですね。では今回は6月まで、7月以降は次回までしばらくお待ちください。
ロシアファッショブログは続きます。
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