ウドムルト神話
ロシア民族のウドムルト人の神話は、同じロシアの他の民族と比較するとキリスト教の神話の影響をあまり受けていません。一方、近隣のチュルク語を話す人々の宗教であるイスラム教からの影響は少なからずあると考えられています。これは特に南部のウドムルト人に当てはまります。
例えば、ウドムルト人の間の善神、および神聖な森を意味するケレメット Керемет は、タタール人とチュヴァシ人の霊の名前と同じです。
また悪霊であるシャイタン Шайтан はイスラム教徒の語彙サタン сатан から直接借りています。
ウドムルト神話の基礎は、フィン・ウゴル神話です。
フィン・ウゴル語の言語コミュニティが崩壊するにつれて、その文化を取り入れる形でウドムルト神話が形成され始めました。その形成の過程で、最初はペルシャ語を話す草原の人々(スキタイ人、サルマティア人、アラン人)、次にチュルクの遊牧民、特にヴォルガブルガリア人の精神文化の影響を色濃く受けました。ウドムルト人の精神文化は、ロシア国家とロシア民族からの多大な影響を経験し始め、17世紀から19世紀のウドムルト人のキリスト教化の間に大きな影響を受けたとされています。ウドムルト神話に対するイスラム教とキリスト教の影響を説明する一部の研究者は、宗教的シンクロリズムという動きとして研究しています。
このように、ウドムルト神話では、いくつかの話をある程度分類することができます。
1.フィン・ウゴル族文化の継承:天地創造の神
2.ペルシャ文化:牛、馬
3.チュルクのイスラム教徒:正と負の神々の葛藤
4.古いロシア正教。
研修者の間では、古代のフィン・ウゴルの際立った宇宙進化論の神話は、ウドムルト人の間では継承されなかったが、近隣の人々から、またはキリスト教化の過程で再借用されたという意見もあります。
それではウドムルト民族の神話の登場人物ならぬ登場神々を見ていきましょう。
ウドムルト民族の神々
フィン・ウゴル統一の時代から保存されて いるウドムルト人の最古の神は、天空の神、そして創造の神インマール Инмар です。インマールに加えて、キルディシン、クアズ、インヴ (Кылдысин, Куазь, Инву) など、他にもいくつかの最高神がいました。
当初キルディシンは人々とともに地球上に住む神でした。彼は白い服を着た老人の姿で現れました。倒れた麦をまっすぐにして、歩きました。その後、人々は畑を拡大しすぎてキルディシンが行く場所がなくなった上、人々が服を染め始めたので、キルディシンはもはや土地に現れなることがなくなったという神話があります。
クアズは天候や大気現象に関連する最高神の1つです。雨を降らすことのできる神です。
インヴーも農業労働に有利な天候を与える最高の神を表します。ただし、検索しても神としてのイメージ画像が出てきませんでした。
ところで数あるウドムルトの神話上では1つの神(インマー)について話しているのか、その他の個々の神について話しているのか、あるいはこれらの神々一体を話しているのかががはっきりしないことがよくあります。、通常、ウドムルト人の異教の祈りは、「オステ・インマーレ、キルディシン、クアゼ…」という言葉で始まりました。
ウドムルト人の主な神の分類には様々な意見があります。D. N.オストロフスキーは、ウドムルト人の3つの主要な神々はインマール、ケレメット、シャイタンであると信じており、N.G.ペルヴキンは、インマール、キルディシン、クアズであると主張しました。またPN Luppovは、インマール、キルディシン、ケレメットを3大神と考えています。
神話上の精霊たち
ウドムルト神話では、神々の元の精霊が非常にたくさんいます。
Вумурт(Vumurt)-水の精霊、Гидмурт(Gidmurt)-納屋の精霊、Нюлэсмурт(Nyulesmurt)-森の精霊、Тӧлпери(Tulperi)-風の精霊、Коркамурт(Korkamurt)-小屋の精霊、Лудмурт(Ludmurt)-牧草地や野原の精霊などです。ではお一人お一人見てまいりましょう。
Вумурт(Vumurt)-水の精霊、は飲み水や用水、川の洪水を担当し、ダム、製粉所の安全性も子の精霊に依存していました。見た目では、wumurtsは一般の人々とほとんど区別がつきませんが、常に黒髪です。
Гидмурт (Gidmurt)-納屋、厩の精霊
この精霊がある馬を愛しているなら、彼はそのたてがみをとかして編み、さらには干し草やオーツ麦を隣の馬から移してしまいます。ギドマートが馬を嫌う場合、彼は一晩中馬に乗って、重い荷物で弱らせてしまいます。
Нюлэсмурт(Nyulesmurt)-森の精霊
Nyulsmurtは森の所有者であり、森は実質的にウドムルト地方の自然環境全体を構成していたため、Nyulsmurtはこれらすべてを担当し、動物の所有者ともみなされます。特に、彼はどのクマがどの巣穴にいるべきかを決定します。ハンターは狩猟の援助を彼に頼ります、家畜の健康もNyulesmurtに依存しました。ハリケーン、竜巻が通過した後にできた森の道は、Nyulesmurtの道と呼ばれ、そのため、Nyulsmurtは風の神と見なされることがありました。NyulsmurtとWumurtsの間で激しい戦いが起こると信じられていたので、人々はその時に森の中の川で泳ぐことを恐れていました。
Тӧлпери(Tulperi)-風の精霊(または悪霊)
人型の精霊(悪霊)です。彼らは豪華な家の地下に住み、地上の女性を妻として誘拐します。しかし人は特別な飲み物を飲むことで、トゥルペリと戦うことができ、そしてそれらを打ち負かすことさえできます。トルペリは強風、竜巻が象徴する悪霊でもあり、黒い雲はトルペリの接近を示します。
社会経済関係の発展に伴い、下霊の名前の2番目の部分であるマート「マン」は、しばしばクジオ「マスター」に置き換えられました。また、人間に敵対し、危害、不幸、病気をもたらす非常に多くの生き物がいました。
離れて立っているのは、パラスマートの「ハーフマン」のような神話上の生き物です。古代には、ウドムルト人の伝説によると、巨人は地球上に住んでいました-アランガサールとゼルパリ。
Коркамурт(Korkamurt)-小屋の精霊
コルカムルトは、小屋の精霊で、小屋で行われる男性と女性の仕事とそこに保管されているすべてのものを担当しています。コルカムルトが誰かを嫌うと、彼は夜にその人を窒息させようと、人の頭とあごひげに髪を絡ませます。その人を気に入ると、コルカムルトは薪を割ったり、木を切ったり、機織りさえしてくれます
Лудмурт(Ludmurt)-牧草地や野原の精霊
Ludmurtは、白い服を着た、子供より背が高くない小さな男の姿をした精霊です。この精霊は動物を守り、作物を見守りました。ludは畑と牧草地の両方を意味します[1]。LudmurtはNyulsmurt森の精霊の親戚であるか、彼の従者と位置付けれれています。人々が牧草地を決める際、この精霊に祈り、オオカミや他の野生動物から牛を守り保護することを頼みました。
さて、ウドムルト神話の登場人物の初回はここまでとし、次回はいよいよこれら登場人物に、地球創造のストーリーを演じてもらいましょう。
お楽しみに。
参考資料
コメント