ロシアファッションブログです。ロシア文学とコスチュームの特集です。今回は前回に引き続き、トルストイの「戦争と平和」に関して、その登場人物とコスチュームを見ていきましょう。
今回は、ナターシャ・ロストヴァの衣装です。
ナターシャ・ロストヴァ
2016年、イギリスBBCのテレビドラマの「戦争と平和」では活気に満ちた魅力的なナターシャを、リリー・ジェームスという女優が演じています。小説では、ナターシャは13歳のときに初めて登場しますが、画面ではヒロイン一人で演じ切っています。以下が、本来の時代考証にあったナターシャのような身分の女性が着るコスチュームです。まずは彼女が自宅で着るであろう、古いタイプの帝国型のドレス、長袖で白い夜会用ガウンです。
では自宅でのナターシャのシーンを見てみましょう。ドレスの下に、その時代に欠かせないコルセットがなく、下着がまったくないように見えることを除いては、それらは本物のものといっていいでしょう因みに当時のコルセットは、いわゆる砂子計型コルセットのようにウエストを極端に締め付けるものではなく、もう少しゆったりしたモデルでした。プリントは素敵ですが、クリアターコイズのペイントはまだありませんでした。しかし、昼間のホームドレスはこのように長袖が一般的でした。
ところで、衣装からは離れますが、19世紀初頭のロシアの雰囲気は、ナターシャの髪型によって台無しにされています。自由奔放な性格を表したかったのでしょうが、19世紀初頭のロシアでは、緩くわずかにカールした髪をそのまま垂らす姿は一般的ではありませんでした。ふつう家では、伝統的な髪型として、編みこみ、簡単な編み上げ、または昔のウクライナの女性大統領ティモシェンコをを覚えていらっしゃるでしょうか、あのように頭の周りに細かく編んでいくの一般的でした。このような古風で普遍的なヘアスタイルは、トルストイのテキストに従っていれば、エレーナにもあてはまることです。
ナターシャの最初の舞踏会の衣装を見ると、そのドレスは真っ白で、たしかに19世紀初頭に着用されたスタイルです。ナターシャには、夜会によく用いられた手袋もはめていますが、全体としてトルストイのイメージ通りではないでしょうか。
さて次に、より古い映像のナターシャと比較してみましょう。
オードリーヘップバーンがナターシャ・ロストヴァの役割を演じるとき、映画会社は有名なフランスのファッションデザイナー、ユベールドジバンシを魅了してイメージを作成しようとしました。しかし、彼は自分のプライドが映画の衣装を作ることを許さないとして、このオッファーを拒否しとことは有名な話です。その後、マリア・デ・マッテイスが衣装デザイナーになりました。彼女はその仕事を見事にこなし、衣装部門でのオスカーを受賞しました。衣装の時代考証は、十分になされ、映像に反映されているようです。
19歳のデビューを飾ったソヴィエト女優リュドミラ・サヴェリエワは、セルゲイ・ボンダルチュク監督がナターシャロストバの役として、有名な女優ではなく、なぜ彼女を起用したかを本人自身が理解していませんでした。映画そのものは、リュドミラ・サヴェリエワは新鮮、純粋で素朴さが全面に出て、監督が彼女に望んでいたとおりえんぎとなり、好評を得ることができました。こちらはソヴィエト映画だけあって、時代考証は的確です。
最後にもう一度。2016年のBBCテレ簿ドラマ版の「戦争と平和」でのリリー演じるナターシャを挙げておきますが、髪形や衣装の時代との不釣り合いがあったことを割り引いて考えても、ブログ筆者は、やはりロシア人のリュドミラがナターシャとしての理想に近い顔立ちや表情ですね。
いかがでしたでしょうか?書いていて面白いので、次回も「戦争と平和」の衣装の話題を続けます。
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