ロシアファッションブログです。ロシアの民族衣装を語るうえで無視できないウドムルト共和国についての情報を提供するシリーズです。
ロシア国内でウドムルトのコスチュームを見つけることは、女性ものであろうと男性ものであろうと、今日のロシアではそれほど難しくありません。お祝いや特別な催し物のための伝統服は、ウドムルト+共和国のほぼすべての地区にあるクラフトハウス、およびイジェフスクにある国立装飾工芸センターで手に入れることができます。ただし、このようなものは、実用的ではなくまた高価です。
ただし、ウドムルト共和国には、民族衣装のモデルを現代の要件に適合させるデザイナーが少数ながらいて、手に入りやすい価格でカジュアルに着こなせる服を提供しています。以下にウドムルト共和国を代表する2人のデザイナーを紹介します。
タチアナ・モスクヴィナ
ウドムルト共和国の首都イジェブスクの中心部にある小さなレンガ造りの建物の2階が、タチアナ・モスクヴィナのスタジオです。T+タチアナはすべての顧客に繊細に人間関係を結ぼうとします。その人がどこで生まれ育ったか、結婚しているか、購入したいコスチュームはどんなものかについて丁寧に尋ねます。注意深く耳を傾け、明確な質問をします。そして、これは「カスタマーフォーカス」というマーケティングの言葉からかけ離れたより人間的なものです。むしろ、人がものを選ぶのを心から助けたいという欲求からのもので、そしてまた伝統を尊重し後世に残す方法論でもあります。モスクヴィナによれば、例えばウドムルト共和国のアルナッシュ地域の居住者がアルナッシュカットのドレスを完全に無視して地域の伝統的なお祭りに参加するのは、不自然で、伝統に背くことになると考えます。よって、このデザイナーの提案は着る人の意向に合うものであり、かつ地方の伝統にのっとったデザインになります。
もし顧客が、「私はウドムルト風を必要としないので、膝の上でカットして、それから開いて袖を作って下さい。」という要求をしたとします。モスクヴィナは、「Udmurtのドレスではないので、私のところでは縫製しないんですよ。」と丁寧ながらも毅然と回答します。
モスクヴィナは国立ウドムルト大学、アートスクールを卒業し、モスクワのイゴールグラバー科学復元センター(当時は復元研究所)でインターンシップを受けました。古代への彼女の思いやりのある態度は、アカデミックなものでかつ真摯なものであるということがわかります。彼女は、本物の服が最も美しく、最も実用的であることを確信しているのです。アンティーク製品のあらゆる細部がいくつもの機能を果たしており、手織りのドレスやシャツに不必要な部分は絶対にないというのが、信念であり、学習と研究の成果なのです。
モスクヴィナの言葉をかみしめてみましょう。
「ウドムルト織機によって作られたのキャンバスの幅はたった38〜42 cmです。この小さい幅が、ドレスのデザイン、パターン、カットの基本です。現代の仕立て屋は、この狭い幅を決して喜ばず、これではデザインが制限されると不平を言うでしょう。けれでもこの生地を折るためには、昔の人の非常に多くの労力が費やされているため、生地の気分を害することはできません!絞られ、叩かれ、織られ、白くされ、ノックアウトされます。こうして多くの人の労力が費やされたキャンパスを、昔の女性は敬意をもって扱い、糸がほころびないよう細心の注意が払われ、そしてすべての切れはしが製品のパーツとして使われるようドレスを構成します。布の残りの切れ端が残ってしまうことは、神が禁じていると考えるのです。古いドレスでは、さまざまな生地の多数のピースが常に正しい役割を担っています。」
さて、ウドムルトのドレスは、将来の着用者にとってお守りとしても機能しました。特にウドムルト共和国のシンボルともなっている十字架に似たがらがありますが、このシンボルがウドムルトの衣装に使われます。
これは古代ロシアの異教のシンボルです。
このようにウドムルトの衣類は特別な役割を担って存在してきました。
これらが民族衣装の主要な原則であり、モスクヴィナの製品の全体的なコンセプトはそれらに基づいています。彼女は伝統を変えることはありませんが、様々な生地とそれらのパターンの助けを借りて着る人のイメージを実現します。
タチアナ・モスクヴィナは35年間、考古学資料としての民族衣装の修復に携わってきました。かつて彼女が復元したものがどれほどユニークであったかを理解した後、彼女は自身で縫い始めました。今、多くのウドムルトの人々が新しい自身の民族衣装を求めて彼女の服を求め始めました。
ウドムルトモチーフの第2の風
ショールーム「ポリーナ・クビスタ」はウドムルト共和国の首都イジェフスクの中心部に位置していました。2018年までです。今は無期休業状態に入っている彼女は、ウドムルト共和国のファション史を語るうえで無視できない存在です。
Polina Kubistaショールームは、イジェフスクの中心部にありました。 太陽が降り注ぐ明るい部屋には、このブランドの衣類やアクセサリー、他のウドムルトのデザイナーによる手工芸品が展示されています。
この服は、ウドムルトだけでなく、数年前から国境を越えて知られています。 デザイナーとしてのポリーナ・クビスタは2008年に出発しています。
彼女の直接な言葉を借りると、
「おそらく、私の製品は様式化と呼ぶことができると思います。これらはモダンな服ですが、ウドムルトの衣装の要素が微妙ながら確実にあります。文字通り、それは国際的であり、国籍、伝統への厳格な愛着を意味するものではなく、さまざまな国で着用することができます」とこのデザイナーは言います。
たとえば、最後の興味深い注文の1つ(リネンで作られたルーズカットのドレスの場合)は、サウジアラビアからイジェフスクに到着た注文でした。
「常にウドムルトの伝統的な衣装をヒントにしたイメージを作りたいと思っています。私たちがドレスの上にベスト(la sestem、ノースリーブ)を着れば、私たちはすでに祖先を宿すことができます。」
相対的な2人のウドムルトデザイナー
タチアナ・モスクヴィナとポリーナ・クビスタの2人は、ウドムルトファッションを代表する人物です。モスクヴィナの創造性の中心には、伝統を守り、何世紀にもわたっての祖先の服の魅力を余すことなく、すべてを示すよう努めています。主要な要素が長い間発明と改良を経てきたことを思いながら、慎重にデザインに反映させます。
ポリーナ・クビスタ製品では、すべてが正反対です。現代のファッションに基づいて、デザイナーはその製品にエスニックコンポーネントを織り込み、それによってそれらにセカンドライフを与えます。
ポーリーナステパノヴァは、デザイナーとしての活動を2018年5月に無期限に停止してしまいましたが、タチヤナ・モスクビナは現在も活躍中であることを、SNSで確認しました。
いかがでしたでしょうか?伝統の保存の仕方にもいろいろありますね。ちなみにブログ筆者はモスクヴィナ派です。昔の物をなるべくそのまま残しながら、アンチテーゼとして時代と対立させたいと思っています。
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