ロシアファッションブログです。スラブの儀式7回目です。今回はロシア式サウナに入るための儀式です。確かにロシアのサウナに入るのは、結構段取りが大変ですし、冷や水を扱いますので、そこに宗教性を帯びることも納得できます。
バーニャ(ロシア式サウナ風呂)の儀式
古代スラブにおけるバーニャの意義:
バーニャはクリスマスの時間とも密接に関連しています。聖なる夜、少女たちは大きなバーニャに集まり、花婿が見つかることを祈ることが習慣でした。このことはプーシキンの作品にも書かれています。
女の子は体のさまざまな部分を冷気にさらし、バーニャの精に将来の配偶者について尋ねます。少女が毛皮で覆われたような温かい手触りを感じた場合、将来の結婚の成功が約束されたことを喜びました。感覚が冷たかった場合、少女が人生の何かを変える必要があるという合図と考えました。
女の子が花婿に思いをはせるだけではなく、農民たちも収穫を期待して祈りをささげる場所がバーニャでした。
バーニャの建設にも独自の伝統がありました。建設の材料はもっぱら木材で、丸太には、松やトウヒなどの針葉樹が使用されています。そのため、上記部屋には松葉の香りで常に溢れていました。浴場の内部には、少なくとも2つの部屋があります。スチームルームと更衣室です。スチームルームには、棚とストーブが収納されさらに広い空間があります。ちなみに、燃料の薪にも独自の要件があり、それが伝統になっており、オーク、ハンノキ、シラカバがよいとされています。
バーニャの儀式の目的:
バーニャの精「バニク」は、常に尊敬と敬意、時には恐怖をもって扱われました。スチームルームに入るには、バニクの許可を得る必要があります。そして入浴後は、浴場から受け取った気持ちよさをバニクに感謝する必要がありました。入浴後バニクのために、蒸気、石鹸、水を救う柄杓等を残す必要がありました。伝説によると、バーニャの精は最後の入浴者が帰った後でのみスチームルームに入りました。なので基本的に、人々は夜の入浴を避け、バーニャの精に敬意を払ったと言われています。このように儀式の目的の一つは、この場所をつかさどる神への感謝なのです。
バーニャの儀式の手順:
バーニャの儀式を行う人は通常、「バーニャの世話人」と呼ばれます。バーニャの儀式は伝統的にバーニャの精への挨拶から始まります。これは世話人によって行われます。伝統的な挨拶のセリフがあります。
「こんにちは、バーニャの神様、平和があなたと共にありますように!
優しい(軽い)蒸気の恵みを!」
「こんにちは、バーニャの精様、あなたの家に平和を!」
優しい(軽い)蒸気の恵みを!」
それから「世話人」はスチームルームで適切なスチームを作ります。スチームルームの調整は、それ自体が技であり芸術とも言えます。
最初の蒸気では、通常蒸すと言うほどの温度にしません。体を少し温め、毛穴を開かせ皮膚に呼吸をさせることに努めます。
ロシア式バーニャでは、体をたたくほうきが使われますが、地域によって材質はまちまちです。ある州ではシラカバ、別の州ではオーク、ライム、モミ、スギなどです。
さてこのほうきの使い方ですが、まず水が焼けた石に供給され蒸気が出ます。これを、ほうきまたはタオルの円運動でスチーム室全体に均等に分配します。これを「軽い蒸気の作成」と表現します。事実、スチームルームの蒸気は層になっています。上部は高温空気で、乾燥、軽量の層です。蒸気の下層は低温、湿潤、で重い層と言えます。そして、これらの層を互いに混合し、スチームルームで温度と湿度の蒸気を混ぜ合わせないと、この蒸気は「重い」と認識され、頭が熱くなり、脚が冷え、体全体が異なる温度と湿度の層にさらされてしまいます。よって、層の均一化により、質の良いサウナ状態を作り、こうした状態に整えることが職人の技なのです。そして、バーニャの精のおまじないに「軽い蒸気」という表現が使われる理由もお判りいただけたことと思います。
もう一つのほうきの使い方ですが、よく動画で見られるようにこれで人を打つだけでなく、ほうきで蒸気をキャッチし、体の適切な場所にこれを宛てるという行為が重要です。
世話人はほうきで足から蒸し始めます。まず、足を蒸し、徐々に体まで上げます。その後、腰、腹部に蒸気を施します。その後、手のひら、腕、背中、胸と上げていきます。そして、体のすべての部分が最初にほうきで蒸された後、緊張や特にストレスのある部分を見極める必要があります。そして、これらの場所でのほうきによる鞭打ちがあります。
この様な各アプローチの間に、冷水をかけるクールダウンが行われ、体の過熱を防ぎます、近くに飛び込んだりできる池やプールがある場合には、冬でも本当に飛び込みます。
ここまでは、儀式というよりも、正しいロシア式サウナの入り方になってしまいましたが、話を儀式に戻しますと、これには水に対してのおまじないという行為が入ります。
おまじないは、水の貼られている桶、クールダウンのための、川、湖、またはプールに対して行われます。水へのおまじないは浄化を目的としており、単に現代の言葉で表す人もいれば、次のように伝統的なおまじないを継承する人々もいます。
「水よ、お水よ、赤い乙女、あなたは山や森を駆け抜け、灰色の石と白い根を洗ったね、私は良き若者、病気、ケガ、悪霊を洗い流し清めてくださいな。」
「ああ、聖水よ、急な岸を洗ように、私を洗ってください(男性の場合)。」「ああ、聖水よ、急な岸を洗ように、すべての悪霊から解かれ私をきれいにしてください(女性の場合)。」
「バーニャの儀式」の最後には、入浴を見守り、助けてくれた神にもう一度感謝しなければなりません。快適で、心地よく、感謝に満ちた環境を後に残しましょう。バーニャは、神の住処です。
いかがでしたでしょうか。ロシアや周辺のスラブ文化の地域に訪問される際はぜひこのサウナをトライしてみてください。とても気持ちいいです。またお風呂の前後におまじないなんか唱えると、きっとまわりのスラブ人の人々から、スラブ文化の理解者として一目置かれることになるでしょう。
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