ロシアファッショブログです。スラブの儀式を特集しています。今回のキャロルはクリスマスにも関する儀式ですが、ロシアはキリスト教国にも関わらず、異教の時代が長く続いた文化ですので、スラブのキャロルは少し変わった趣です。
обряда колядования「キャロル」の儀式:
日本でクリスマスキャロルというと、イエス・キリストの誕生に関連したクリスマスイブや当日に教会で歌われる歌を一般的には意味します。ロシア語では「コリャドバーニャ」と言いますが、訳せばキャロルになります。けれども単に歌という意味ではなく、クリスマスや懺悔節に行われる、人々の各家庭への訪問を目的とした練り歩き(その際、キリストに関する歌が歌われる)のことを言います。
実はこのキャロル、キリスト教から取り入れたものですが、もともとは古代スラブに由来しているもので、悪霊に対する魔法というものでした。このキャロルに限らず、古代スラブ由来の呪術やお祈りが起源で、キリスト由来の儀式に融合させてしまった例は多くあります。本来、キリスト教の支配は欧州やラテンアメリカのカトリックを見ればわかるように、厳格に異教を排しますが、ヨーロッパから見れば辺境の地であったロシアへの厳しい制御は行えなかったため、キリスト教から見ての異教のしきたりが、キリスト教と融合する形で残ったのだろうと考えられています。
この、ロシアのキャロルも異教の儀式です。
歴史的には、キリストの教会は悪魔祓いとしてのキャロルを禁止し、宗教としての正しいイデオロギー的内容に修正するよう努力しました。チェコとポーランドの教会で、クリスマスイブの異教の慣習としてのキャロルは非難されましたが、その後、イブやその1週間前のキャロルは教会により承認されています。他の場所では、民族的な異教のキャロルは、悪魔の儀式として、19世紀まで続きました。
キャロルの行われる時期:
キャロルの儀式は、クリスマスの期間に何度も行われます。最も典型的なのは、聖なるキャロルとして、クリスマスの最初の3日間(クリスマスイブ、クリスマス、聖ステファンの日)と大晦日の前夜です。
普通、大人のキャロルは夕方と夜に行われます。多くの場所で、夜明け後のキャロルを行いません、というのも、太陽が出ているときには行ってはならない儀式とされるからです。
キャロルグループの構成:
この儀式の構成は、まさに地域によってさまざまで、大人と子供、男性と女性が別々な場合もあれば、混合グループ名なることもあります。ただし、男性のみのキャロルグループがより伝統的であると考えられている地域もあります(バルカン-カルパティア地域の場合)。男性のグループは、未婚の成人男性であることが多いです。1グループは、5〜6人、あるいは10〜15人の参加者で構成され、それぞれが特定の儀式の役割を果たしました。ただし慣行と民間伝承の知識が豊富な、1名の年配の既婚男性が率いることも多かったようです。
場所によっては、明確なキャロルの組織化の兆候が不鮮明にです。例えば、ベラルーシと南ロシアの伝統では、ほとんどの場合、ガイド役と訪問宅への贈り物選定の構成員のみが重要で、他の構成員の年齢・性別が特段考慮されることはありませんでした。
キャロル儀式の構成:
キャロル儀式の構成要素は、準備段階つまり、歌や踊りのリハーサル、衣装の選択にはじまり、訪問を受ける家の参加者の集合、キャロルグループの村の練り歩き、各家の庭や窓辺歌での歌や踊り、所有者との接触、家の中での歌や踊り、贈り物の受け取り、家の所有者への別れ、そしてキャロル終了時の食事会です。
家に近づくと、キャロルグループは窓の下または庭に立って、所有者を呼びます。この始まりは、ほとんどの儀式にとって本質的に普遍的です。キャロルのリーダーは到着を報告し、キャロルを許可するようにオーナーに要請し、準備ができているかどうかを確認しました。許可を得た後、主な儀式がが始まります。歌や踊りによる、お祈りです。所有者が食べ物を中庭に運んだ場合、キャロルは贈り物に感謝して次の家に行きました。訪問者が家に招待された場合、彼らは世帯ごとに特別な歌や踊りを演奏しました。
儀式の主な核心は、グループに贈り物を贈る瞬間です。キャロルの贈り物は、食品(焼き菓子、ラード、ソーセージ、ナッツ、果物など)で構成されており、小額のお金や糸も捧げものになりました。しかし、最も伝統的な(そして一部の場所では厳密に義務付けられている)贈り物は、儀式用の神聖なパンでした。キャロルを受け入れない家では、それからね1年間を通じて経済的利益はないと考えられていました。
儀式の目的:
先述のとおり、スラブのキャロルは、キリスト教のクリスマスキャロルとは異なり、異教の儀式ですから、本来の儀式の目的があります。キリスト生誕のお祝いではありません。
儀式により、家の所有者は、災厄を逃れ、畑、家畜の生業の繁栄、家族を病気から守り、幸福を願いました。最近誰かが亡くなった家だけには訪問の機会が与えられませんが、拒否しない限り村の家々全てが訪問対象です。とても東洋的な考えですが、経済の繁栄が主な目的の儀式ですから、山岳地帯では-村の下端から上に向かって訪問の順番を決めたとされています。
儀式の文言には、キャロルのグループ構成員は神のしもべ、神の使者、前例のない客と呼ばれていました。人によっては、おそらくキリスト教の教えを忠実に理解した家族ですが、キャロルの儀式を、不潔で危険なことと解釈さし、キャロルを家に入れることを禁じました。なので、キャロルグループ、到着への贈り物を、窓を通してのみ行う家族があったのです。
悪霊を取り払う面白い儀式がスラブにあります。井戸の水を飲み、氷の池に穴をあけて水に浸る儀式です。これを行ったキャロルグループのみ、家へ招き入れるという家族もありました。
さて、以上が「キャロル」の儀式ですが、対象こそ違いますが家に招き入れてご馳走することやご祝儀を振舞って家の幸福を願うことなどは、これも日本の「獅子舞」や男鹿の「なまはげ」に似ていますよね。
今回は以上です。次回もスラブの儀式シリーズは続きます。
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