ロシア民族衣装のお店キリコシナ
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ロシアファッションヒストリー76 ベラルーシのリネン

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出典:https://www.belarus.by/rel_image/4587
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Белорусский шелк ⋆ Статья о Беларуси
История становления белорусского льна как национального бренда. Чем же он так хорош? Разбираемся в статье.

ベラルーシのリネン

ロシアファッションブログです。これまで、ベラルーシの民族衣装としての素材や、天然素材を好むベラルーシのデザイナー達がよく使う素材として、亜麻(リネン)が多用されてきたことをお話しました。スラブにおいて、昔からベラルーシは良質な亜麻の産地であり、現在でもベラルーシ産の亜麻は、その高い品質から国際的な評価を受けています。今回はベラルーシの亜麻を取り上げたいと思います。

現代の亜麻の収穫
出典:https://www.belta.by/regions/view/reportazh-len-ljubit-poklon-261895-2017/

«Лен – любит поклон»という表現がありますが「亜麻は人に頭を下げてほしがる」と訳すことができましょう。Google翻訳をやってみると、「亜麻は弓が好き」で、何のことだかわからない訳になっています。亜麻というのは栽培が難しく、ちょっとの環境変化で品質も収量も変わってしまうため、怠惰な農園を戒める例えで、「敬って育てなければ育たない」、ということの例えです。

よって、この難しい亜麻を栽培し、産業にまで育て上げることは一つの技術と言っていいほどの大事業であったことでしょう。実際にベラルーシは自国の亜麻を、ヨーロッパのほぼすべての国へ輸出することに成功しました。ベラルーシにに亜麻がいつ出現したかは誰にもわかりませんが、ポロツク地方では10世紀のものと考えられる古代集落の考古学的発掘調査で科学者たちは陶器の中の亜麻の種子を見つけました。

咲く亜麻はラベンダーを思い出させる

亜麻の花はラベンダーに似ています。

修道院で栽培されていた亜麻

12世紀半ばには、ベラルーシ地方の修道院では自分たちの衣服の作成のため、自ら栽培し、収穫した亜麻の服を編んでいました。亜麻は次第に一般に普及しはじめ、リトアニア大公国で栽培される最も人気のある作物の1つになりました。さらにこのリトアニアの亜麻も人気のある輸出品になり、商人はそれをハンザ同盟の都市に持ち込み、ヨーロッパ全土に流通するようになりました。

リトアニア大公国 1387年
出典:Public Domain

亜麻の生地は、その価格と収量から、洋服や食卓のクロスの最貧困層のニーズを満たすのに十分であり、かつ輸出にも回すことができました。

古の亜麻収穫をしのんでの撮影
出典:https://www.liveinternet.ru/users/koteroza/post367110854

 

亜麻の開発に取り組んだ女王

ポーランドの女王、そしてリトアニア大公国の大公爵でもあるボンスフォルツァは、現代のベラルーシの領土につながる亜麻の開発に尽力した人です。

偉大なダヴィンチのボンスフォルツァの肖像画

レオナルド・ダヴィンチによるボンスフォルツァの肖像画

ボンスフォルツァ女王は農業に興味を持っており、亜麻の選択に従事していたオランダの農学者を自身の農場に連れてきて、亜麻の栽培をまかせました。
女王は、品質と強度の点で、当時広範囲に流通していたインド産に劣らない亜麻繊維織物の生産を命じました。ボナスフォルツァ自身も常に地元の亜麻のサマードレスを着ており、さらに亜麻のレースと銀の刺繍で飾られたものが大変なお気に入りだったとされています。当時の貴族のドレスはやはり絹が多用されていたはずですから、女王の格別な亜麻への興味が推し量られるエピソードです。しかし、実際には当時の亜麻の服は、やはり農民、貧しい市民、さまざまな教会の修道士にとって最良の選択肢としての素材でした。

 

亜麻の保温性

なぜ、亜麻のように、日本では夏の生地として扱われるものが、極寒の土地でも重宝されるのでしょうか。これを納得させれる、エピソードがあります。

亜麻は、現在のベラルーシの土地がロシア帝国の一部(ルーシの一部)となった後でも、最貧層の生地としての機能を継続しました。そして、世界大戦下においてもベラルーシの亜麻工場は稼働していました。
ベラルーシ西部が1939年までポーランドの一部であった時期に、ポーランド政府は緩い条件の貸し付けを行い、農民の農場や農業協同組合に高品質のフランスの種子を供給して、ポレジー地域とグロドノ地域を亜麻の栽培地域として支援しました。

かつて、ポーランドの新聞が、暖かい季節に南極の半島の1つを調査するために、30年代に行われたポーランド・デンマーク混成南極探検を詳細に取り上たことがあります。

遠征は、ポーランドの科学者ヘンリック・アルツォフスキーによって計画されました。彼のアドバイスで、ポーランド人は、ベラルーシ・グロドノ産のリネンを着ていました。探検は何人かの遭難者を伴う悲劇的な結果となりましたが、リネンを着たすべてのポーランド人が生き残っていて、アンゴラの羊毛の着たデンマーク人だけが亡くなったということが話題となりました。

ポーランド・遠征隊
出典:http://arctowski.wielkiehistorie.pl/en/

ヘンリック・アルツォフスキー
出典:http://arctowski.wielkiehistorie.pl/en/

実際の亜麻の構造はその中空構造から、保温性の良さが説明されており、夏涼しく、冬温かい素材として特にスラブの国々では現在でも重宝されている素材です。
亜麻をベラルーシの主要産業に育て上げたわき役たち

大祖国戦争後、ベラルーシでは亜麻の畑が空になったと言っていい程荒廃しました。けれども直ぐに再度種をまき始め、1945年には特段のテクノロジーなしで、45,000ヘクタールの亜麻の畑が作られました。驚いたことに、主要な農業従事者は主に女性、子供、戦争による障害者だったと言います。

出典:https://vk.com/note62373223_11806583

 

亜麻栽培は有益でした

生産量は下降気味

ベラルーシは、亜麻繊維の収集と輸出で引き続き上位10か国の1つですが、2018年のベラルーシにおける亜麻の耕作面積は47,000ヘクタールで、1945年当時と変わらなくなってしまいました。というのも安価な中国製、トルコ製に取って代わられたからです。よってこの作物の収益性自体も低下しています。

そうした中、国営企業フラックスインスティテュートという、亜麻の研究は勿論のこと、数十のシードステーション、30の主要な亜麻処理プラント、そしてヨーロッパ最大の巨大な亜麻工場を有している会社がベラルーシにあります。


出典:http://www.orshanka.by/?p=33443

ベラルーシの亜麻製粉所

ベラルーシ亜麻の特性

ベラルーシの亜麻はその自然さで評価されています。中国やトルコとは異なり、ベラルーシの農場では、繊維の成長と柔らかさを刺激するGM種子や有害な化学物質を使用していないのが最大の特徴です。よりオーガニックに近いということです。ベラルーシの亜麻製品を購入するとき、このユニークな植物のすべての自然の品質がこの素材に保存されていることに気づくはずだ、とベラルーシの亜麻研究者は語っています。

フラックスインスティテュート
出典:https://fnclk.ru/novosti/institut-lna-v-uste-novye-dostizheniya-i-perspektivy/

実際には、科学者がリネン生地が通気性、耐摩耗性、熱伝導性、吸湿性の面で最高の割合を持っていることを発見したのはごく最近のことです。亜麻には細菌は共存できず、追加の化学処理を行わなくても優れた防腐剤として機能します。リネン生地は時間の経過とともに剥離しないため、この素材で作られた服は、いつまでも劣化することなく、買ったままの品質が保持されます。

フラックスインスティテュートが研究している亜麻
出典:https://fnclk.ru/novosti/institut-lna-v-uste-novye-dostizheniya-i-perspektivy/

 

ベラルーシの亜麻ビジネス

CIS大統領、ベラルーシのリネンシャツ

CISが機能していたころの各国大統領、ベラルーシのリネンシャツを着て

ベラルーシの亜麻製品として現在最も人気のあるのは、Orsha Flax Millが製造したベッドカバーとテーブルリネンです。これらの製品は、「ベラルーシの亜麻」のブランド名でベラルーシ国内全体で運営されている小売ネットワークでいつでも購入できます。ミンスクでは、このような店は独立広場にある地下のショッピングセンター「キャピタル」にあります。もしミンスクに行かれる機会があれば立ち寄ってみてください。本当に安価で高品質のものが手に入るそうです。

 

 

ベラルーシの亜麻からデザイナーの服

ベラルーシの亜麻を使った製品のファッションショー

当ブログでは、ベラルーシの多くのファッションデザイナーが好んでリネン生地を使用していることをお伝えしました。ポストコロナの世界では、通販などが広がり、嗜好の変化の加速化や衛生志向の高まりとともに、ベラルーシの亜麻が再評価されるかもしれませんね。

こうした製品以外、お土産としてリネン人形、刺繍入りシャツなどの民族衣装を販売しているお店もベラルーシには多数あります。

出典:https://www.belarus.by/rel_image/4587

出典:https://jp.123rf.com/photo_48422047_belarusian-straw-doll-straw-dolls-are-most-popular-souvenirs-from-belarus-.html

 

唯一の欠点

亜麻製品の皺
出典:https://profistyle70.ru/zdorove/chto-sdelat-chtoby-tkan-platya-ne-myalas-chto-delat-esli-odezhda-silno/

亜麻は、すべての有用な特性を備えていますが、大きな欠点があります。アイロンの歯が立たないこともあるという性質、皺ですね。1時間格闘しても、整ってくれない場合もあります。しかし、夏の暑さの中でベラルーシのリネンで作られたシャツ、ドレス、ブラウスを着ると、祖先がこの素材を高く評価した理由がすぐに明らかになります。実際、アフリカの暑さでも、亜麻は人の体温を他の材料よりも3〜4度低く保つというデータがあるそうです。

長所と短所のバランスと、更にそれを価格と比べてみるということになりますが、嫁の作る亜麻製(亜麻100%、あるいはもう少し柔らかい亜麻50%・綿50%の着心地は最高)のルパシカをいつも着ているブログ筆者には、この素材の真価をいつも実感しているのです。

いかがでしたでしょうか。

さらにロシアファッションブログは続きます

参考としたURL:

Белорусский шелк ⋆ Статья о Беларуси
История становления белорусского льна как национального бренда. Чем же он так хорош? Разбираемся в статье.

 

 

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