ロシア民族衣装のお店キリコシナ
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ロシアファッションヒストリー62 ウクライナ特集 伝統的なウクライナ刺繍の霊性

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当ブログは、ロシアファッションヒストリーと題して、ロシアに限らず広くスラブ関連のファッションを取り上げています。今回からはスラブ文化の一つの要であるウクライナ文化を取り上げたいと思います。

伝統的なウクライナ刺繍の多様性と重要性

ウクライナはご存じのように、キエフを首都としたれっきとした国ですが、歴史上、ソ連の中の一つの共和国でしたし、さらにさかのぼればキエフはロシアの起源でもあるルーシという王国の首都でした。その後タタール人の侵略を経てルーシの首都はモスクワに移りますが、そういう意味では現在のロシアの成り立ち・起源をたどればウクライナという国の起源と同一になってしまうのです。

ソ連崩壊後、2つの別々の国となったロシアとウクライナは今日まで何かと政治衝突をしていますが、こと民族文化に関しては両者のかかわりは深いと言いますか、同根とも言えますので、本来やれこれはロシアだいやウクライナだとは言えないはずなのです。言葉でさえ、ウクライナ語は古いロシア語だと考えられているくらいですから。

しかしながら、民族衣装などの伝統文化は地域を細かく限定して起源を辿れる場合があり、これは現在のウクライナ領のものだ、あるいはロシア領のものだということができます。また色やシルエットもよりロシア的なのか、よりウクライナ的なのかもある程度は区別できます。よって、今回から何度かにわたって、ほぼウクライナの伝統と言ってよい民族的な装飾・衣装などを紹介したいと思います。

ウクライナ刺繍
ウクライナの各地域には独自の刺繍パターンがあります

 

ウクライナの民族衣装における大きな特徴はロシアと同様、その刺繍の装飾と呪術的意味、つまりウクライナ的霊性と呼べる伝統性です。

このブログでは過去。「ロシアの霊性」シリーズとしてロシアの民族衣装に施されてきた刺繍を中心に、様々な伝統的な絵柄について紹介してきました。ウクライナの特集では、こうした絵柄の内、主にウクライナにおいて保存され、ロシアとの類似性を示しながら、異なった方向性を有するウクライナ的なものを取り上げていきたいと思います。

まずはウクライナ刺繍の歴史を見ていきましょう。

ウクライナ刺繍の歴史

スラブ、とりわけウクライナの刺繍の誕生については、正確な答えを出すことができる科学者がいないようです。しかし、ウクライナの刺繍の鍵となる発見は、トリポリ文化の間に衣服や家庭用品を飾るために刺繍を使用していたことだと考える考古学者がいます。このトリポリ文化の「トリポリ」とはリビアの首都とは関係ありません。紀元前5千年の初期青銅器時代に始まったとされるウクライナのドニエプル地方からモルドバにかけての地域で見つかった文化圏で、ウクライナのトリポリ村から命名されました。

Cucuteni_Trypillian_culture_boundaries
出典:Public Domain

ウクライナ刺繍はキエフルーシ時代に芸術として高く評価され、若い女性のための寄宿学校が多く開かれ、そこでスキルを磨くことができました。16-17世紀には、そのような針仕事による刺繍は広く認知され、様々な新しいテクニックが生まれ、機械刺繍にせよ、手縫いにせよ現在のウクライナ刺繍として残りました。

ウクライナ刺繍
現在でもかなり多くの古代ウクライナの装飾品が保存され、リメークされています。

 

他のスラブ文化同様、ウクライナでのクロスステッチは、服、儀式のための布または家庭用品を飾るという目的だけではなく、伝説に従い、象徴的なパターンが強力な魔除けを表しています。

ウクライナ刺繍
部屋の各署に飾られた伝統的な刺繍

 

刺繍は伝統的にもっぱら女性の仕事と考えられてきました。そしてその技法や絵柄は、祖母から母へ、母から娘へ継承されました。今日でも、多くのウクライナの村々には、ウクライナ伝統の装飾品に精通し、クロスステッチの技法を教える腕の良い職人がまだいます。

ウクライナ刺繍-家族の歴史の守護者
ウクライナの職人が信じられないほど美しいヴィシヴァンカ(刺繍入り衣服)を作成しました

 

ウクライナ刺繍-rushnyks
刺繍されたタオルはウクライナの文化の特別な場所を占めています

 

チャームのウクライナ刺繍
伝統的なウクライナの人形も刺繍で飾られています

ウクライナの霊性:絵柄の種類と意味

ウクライナ風のオリジナルの刺繍は、祖先の生活、彼らの信仰、伝統、そして民俗文化の特徴についての驚くべき物語を語っています。これらは単なる装飾的な華やかな模様ではありません。それぞれが、霊性というべき、神々や自然との会話・交歓という象徴的な意味を持っています。

ウクライナ刺繍のパターン
美しい鮮やかな模様の背後には、何世紀にもわたる歴史の深い意味があります。

 

以下にウクライナの刺繍で主要テーマとなる、いくつかの絵柄をお見せします。一部以前紹介した「ロシアの霊性」で取り上げた絵柄と重複しますが、以下にお見せするものは特にウクライナで大切に継承されウクライナ的な絵柄と考えられているものです。

 

ベレギニア

これは多くのウクライナの装飾品中心でありかつ強力な象徴であり、母の愛と力を現しています。

 ベレギニア-ウクライナ文字
ベレギニア

 

 ベレギニア-ウクライナ文字
多くの場合、鳥や花がベレギニアの手に描かれています。

 

ウクライナの文字
花はしばしば妊娠の象徴です。

 

葡萄

華やかな葡萄の絵柄は、神聖さ、家族の調和、幸福と幸運を象徴しています。

グレープバイン-ウクライナのシンボル
葡萄の刺繍入りタオル

 

グレープバイン-ウクライナ刺繍
葡萄の刺繍パターン

 

グレープバイン-ウクライナ刺繍
つるを加えた葡萄の刺繍パターンもよく見られる

 

ロシアでよくみられる鳥は雄鶏でしたが、ウクライナでは鳩がポピュラーで「神の鳥」とも呼ばれます。平和、犠牲、魂の純粋さを表現しています。古くから、結婚式で使われる布地は鳩の模様を飾り、永遠の優しさ・永遠の愛の象徴でした。その伝統は今日までウクライナに継承されています。

ピジョン-ウクライナ刺繍
ハトは結婚式に刺繍されることが最も多い

 

楢の木(オーク)

強さと勇気を体現する伝統的なシンボルで男性のルパシカに刺繍されることが多いです。

オーク・ウクライナ刺繍
オークの枝の刺繍

 

オーク・ウクライナ刺繍
オークの葉の刺繍パターン

 

オーク・ウクライナ刺繍
オークの刺繍パターン

 

カリーナ(ガマズミ属の木の果実)

カリンカ・、マリンカ、マリンカマヤのあれです。このシンボルは太陽と火を象徴して、家族の不死を願ったものです。よって鳩同様、新郎新婦の結婚式の服はカリーナの房がたっぷりと刺繍されています。

カリーナ-ウクライナ刺繍
カリーナの刺繍オプション

 

カリナ・ウクライナ刺繍
カリーナの刺繍入り女性用ルパシカ

 

Kalinaスキーム-ウクライナ刺繍
カリーナの木はしばしばオークの葉とともに描かれ、男性と女性のつながりを象徴しています

 

薔薇

今日でも薔薇のパターンは、熱情と圧倒的な美しさを現し、人々に感銘を与える機能を持っています。

ローズ・ウクライナ刺繍
薔薇の刺繍模様

 

ローズ・ウクライナ刺繍
薔薇を刺繍したブラウス

 

ローズ・ウクライナ刺繍
バラは他の花、例えばユリと組み合わせられます

 

いかがでしたでしょうか、ウクライナの刺繍の神秘性を少しでも感じていただければ幸いです。次回もウクライナ特集は続きます。

参考URL・文献など

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Исторические и культурные особенности национальной украинской одежды
Украинский традиционный костюм во многих чертах напоминает костюм других восточных славян.

 

 

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