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ロシアファッションヒストリー20 ホフロマ

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ホフロマってごぞんじですか? オリジナルの意味はロシアの伝統的な木製食器への塗装の技術やデザインの1つを示す固有名詞です。しかしそのデザインがロシア固有で、かつロシアの雰囲気があふれていますので、食器に限らず、衣装、つまりロシア伝統をモチーフとしたファッションに使われることも非常に頻繁なのです。このブログでも先週、ロシアの頭飾りプラトックが現在のロシアファッションのモチーフに使われる例を紹介しました。ロシアファッションヒストリー17 プラトック(スカーフ)

では、本日のブログでは、ロシアの伝統文化やロシアのファッションを語るうえで、到底無視できないホフロマの魅力を、紹介することといたしましょう。

 

ホフロマの特徴は上の画像のように、光沢のある黒い背景の上に金色と赤の模様、模様は一般的には植物で特にベリーが描かれることが多いです。

我が家のホフロマ

今、このホフロマは伝統工芸、かつ美術品と認められていますが、しかし少し前まではこれは飾って眺めておくものではなく、実用品でした。現に我が家ではホフロマのスプーンや容器を実用品として使っています。

我が家のホフロマ 装飾用

飾っておくだけだったらもちろんいつまでも光沢豊かな塗り物です。下の画像は我が家のホフロマですが10年以上前に購入し使ってきたものです。

我が家のホフロマ 実用品として使用

ほぼ毎日使って10年以上になりますが、摩擦するところ以外はほとんど塗りははげません。そして光沢もそれほどなくなっていません。このように、実用性も十分なのが、さすがロシアらしいと思います。

 

ホフロマの歴史

ホフロマの技術は、17世紀後半にロシアのヴォルガ川流域のホフロマ村(ニジニノヴゴロド地域のコヴェルニンスキー地区、上の画像)で誕生しました。その時から、その特徴は、木製の表面に金メッキを施し、いろいろな模様を施したという点で今と変わりません。当時からヴォルガ川の左岸には多くの村があり、そこでは魚の漁が盛んに行われており、グリビノ、ベズデル、モクシノという各村の住民は、ホフロマ村で商品を売りに出しました。

 

「金」の色付けは、ヴォルガ地域のハリスト教信者(ロシア正教)たちの中のイコンを書く画家の手法に関連しているそうです。この宗教心熱い信者たちは、古教義派の信仰を追求していたため、住居は村近くの、林の中にかまえていました。林の中の芸術家の嗜好と、木材を加工し、それを塗装する技術がその地域で発展したことが、現在のホフロマを生んだわけです。

イコン:『ウラジーミルの生神女』(モスクワ、トレチャコフ美術館所蔵):
Public Domain

イコンとはハリスト(キリスト)をふくめたロシア宗教上の上のような肖像画です。

イコン画家に関してはいくつの美しい伝説があります。それらの1つですが、かつて家長制度の改革のために首都から逃げたイコン画家アンドレイ・ロスクットについてのものです。彼はうっそうとした林の中に隠れ家を見つけ、そこで昔ながらの方法でイコンを描き続けたそうです。

しかし、新教義派と古教義派の信者が分かれたとき、古教義派の信者が森に逃げたという事件がありました。ロシア正教の教皇は、彼らが近くの村の住民の「古い」教義を教えていたと知らされました。反逆者とされた古教義派の僧たちは、彼のスキルを維持するために生徒たちに、古教義を遺贈したのちに、多くが焼身自殺をしました。

別の伝説によると、ある人物が森の奥に住んでいて、彼は一人っきりで、ホフロマ技術を発明し、時々近くの村の住民に彼の作品を贈っていました。そのうち、この不思議な芸術家の名声が王にまでとどろくようになり、王は臣下を森に送り、ホフロマの創設者を城に連れて来ようとしました。しかし、芸術家は王に従属することを望まなかったという話です。その後臣下を送ったもののそのような才能のある人はとうとう見つからなかったということです。

 

ホフロマの色

さて、ホフロマという芸術をより理解するために、色使いや描く順番など技法についても見ていきましょう。

伝統的なホフロマの作り方ですが、まず最初はほんの少しの色のパレットを使用します。ただし絵の構成は複雑かつ精緻です。表現力豊かで趣のある下絵を最初に描きます。大切なのは、この時ホフロマ芸術のキーである金色のインパクトを考慮することです。上絵の模様は常に繊細な筆さばきで作成されます。構図は、内側から金色の輝きに照らされているかのように、明るく開放的です。

背景の書き込みでは、輪郭形状が最初に形成されます。次に、周囲の背景に赤と黒の塗料を塗ります。背景画は、より複雑で面倒なプロセスです。即興の場はなく、最初のアイデアは、画家が最初に思いついたとおりに忠実に描く必要があります。

上の画像のように、伝統的なホフロマは白い背景に鳥やベリーなどの自然のモチーフが描かれるものなのです。

しかし、現在背景色として好まれているのは黒と赤です。

 

 

また近頃時々見られる、ターコイズ、エメラルド、オレンジ、等の背景の絵は昔はあまり一般的ではありませんでした。

「ホフロマ」に使われる色は主に次の9色です。ロシアにおける色識別番号を付記しておきます。

  1. (#000000);
  2. (#FF0000);
  3. (#FFFFFF);
  4. オレンジ(#FF4F00);
  5. セレクティブイエロー(#FFBA00);
  6. (#00FF00);
  7. ブラウン(#964B00);
  8. エメラルド(#50C878);
  9. ブルー(#00BFFF)。

 

ホフロマの描画の例を見ると、ロシア民族の魂全体、つまり人の温もりと素朴な生活哲学が明確にあらわされていることがわかります。その哲学とは草や穂などの植物への愛情であり、その愛情が特に明るい新鮮なな色や、繊細な筆さばきとなって、下の絵のような複雑な構成が描かれるのです。

先述のように、ホフロマのテーマは主に植物ですが、そのモチーフは「スゲ(菅)」によって表されます。最も古いパターンは、実は金色ではなく銀色の背景にカールした小枝、小さな果実、小穂で描かれていました。熟練した職人になると、個々の草の葉から、鶏、蝶やかたつむりのモチーフを作ることができます。

 

我が家のサマバールのホフロマからも、枝と一体となって鳥が顔を出しています。

我が家のサマバール ホフロマ模様

 

「ベリー」と「葉」は、「すげ」と異なりもう少し大胆に描かれます。職人さんは「楕円形」の葉、やや丸みを帯びた果実を描き、「巨大な植物の形」を印象付けるようそれぞれのコンテンツをスタイリングします。果実の中で特に人気のあるのは、イチゴ、ラズベリー、ブルーベリー等のベリー類、そしてブドウや大きなチェリーのパターンです。これに加えて、チューリップ、アスター、キンポウゲ、ヒナギクなども登場します。

「プリャニック(お菓子)」と呼ばれる模様 や 「リジック(サフラン色)」とよばれるオレンジの色使いは、通常、カップ、皿、ボウルの内側に描かれます。これらは、正方形または菱形に収まる幾何学的形状です。中央に「太陽」が描かれることが多いです。

プリャニック

リジック

 

装飾全体の周辺部分には、以下のようなミニチュアのディテールが豊富にあります。

いかがでしたでしょうか、ホフロマというロシアの芸術が少しでも身近に感じていただければ幸いです。

今回の記事、画像は、主に、https://schci.ru/hohlomskaya_rospis.html

を参考といたしました。

今日はここまで。では次回もホフロマやその他のロシア伝統の芸術品についてご紹介していきます。

 

その他の参考資料(すべてロシア語のウェブサイトです):

https://ru.russianarts.online/crafts/28-xoxloma/
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