前回からの続きです。ロシア ファッション ヒストリー ルパシカ 12
このブログはロシアのファッションに興味をお持ちの方に発信しているものですが、ルパシカやサラファンという主要テーマに加え、ロシアファッション全般、その歴史、政治を含む時代背景などの関連情報も提供しています。
ロシアには国際芸術家連盟(Член Международной федерации художников)という組織があり、その伝統芸術セクションのメンバーであるセルゲイ・グルブッシュと言う方が、ロシア民族衣装のコレクションを有しています。
他にいくつかあるコレクション、例えば前回、前々回のブログで紹介したカレリナコレクション等、
等と比較しても、歴史的価値はより高いという評価があるようなので、今回はこのセルゲイコレクションを解説いたします。
セルゲイコレクションの特徴はロシアの19世紀、20世紀全般の農民の民族衣装の豊富さにあります。セルゲイ氏は過去30年にわたり、2000以上のアイテムを蒐集したそうです。ロシア文化を特集したメディアやウェブサイトに何度も登場されています。
今回は、フリーに画像提供をしているサイト
から画像をお借りし、解説を加えようと思います。画像が豊富なので、2回に分けてお送りします。
まずは何枚かの画像をご覧ください。
上の画像のブラウスは、赤黒の花の刺繍で飾られたリネンクロスで作られています。スカートはやはり花柄でジャカードです。端は金のテープとフリンジで飾られています。上着は ハーフコート、頭飾りは金属箔にビーズと真珠が刺繍されています。全体的に琥珀色のビーズによって補完されています。この衣装は農家と言っても、かなり裕福な家庭のもので、小作農(ロシアでは農奴といいます)ではなく、地主の娘の衣装であったことが想像できます。
当時ロシアで最も人気のあったサラファンがこのタイプだったと考えられています。このサラファンを作るのに昔は45メートルの布が必要でした。パネヴァ(巻きスカート)はロシアの衣装の最も古いアイテムの一つです。ベルゴロド地方では、女の子は成人したときにそれを身に着けることができました。そして、農民はパネヴァを「永遠のクランプ」または「赤ちゃんの束縛」と呼びました。
装飾豊かなサラファンです。袖も、赤い生地のフリルで刺繍され、全体に花柄で刺繍されています。下の裾は幾何学的な装飾で赤い糸で飾られています。サラファンの上には、自家製のウールを素材とした、ダークブルーの市松模様の布で作られたパネヴァ(巻きスカート)が合わされています。パネヴァの端にも、白い幾何学的装飾品を持つ赤い糸のストリップがあります。
少し見にくいですが、画像の解説には、頭飾りは、スパンコール、金色のビーズが装飾された、赤い布で作られた柔らかい帽子の形を基本としたもの、という記述がありました。
また女性の華やかで裕福なイメージが胸の宝石によって強調されていますね。赤いガラスビーズと琥珀色のマルチカラービーズで作られたゲルダンと言う飾りをつけています。ゲルダンについてはいずれ取り上げて皆様に紹介していこうと思います。 こうした伝統的なお祝いの衣装は、つい最近1930年代までブリャンスク地方の農民の生活の中で保存されていました。ロシアでは種々の刺繍パターンを見ることができますが、最も古代のパターンは、幾何学模様の刺繍です。19世紀後半から20世紀初頭になって初めて、ファッションは花の装飾品に道を譲ったそうです。また、ブリャンスク地方の衣装には、ベラルーシとウクライナの伝統が大分影響を与えたことがわかっています。そういえば、ゲルダンはウクライナ地方の装飾ですね。
上の画像のサラファンはウールを素材とした、濃茶色 紫、緑の縦縞の柄です。サラファンの上に、スクマンニクと呼ばれるコートを着ていますが、これは フックやボタンのついた厚いウール生地で作られたものです。腰は、紫、青、黄色、緑のベルトで結ばれています。解説にはココシュニックは、高価な生地から縫い付けられた櫛型の折り目を持ったものという特徴の記述がありました。裕福な家庭のもので、お祝い事に用いられたであろうとのことです。
サラファンは、2枚の重ね着に見せかけてはいますが、実は1枚です。頭飾りは、ビーズの装飾の施された控えめな表現を持つ柔らかいサテンで、特別な方法でシルクジャカードショールが敷設されています。黄色や琥珀色のネックレスが合わされています。
サラファンは、黒い糸で刺繍されたリネン製のものです。この地方では黒が最も人気のある色で、地球と平和の色と考えられていました。手首の袖は、黒い三つ編みと赤い糸で刺繍されています。腕と首は白いビーズで飾られています。スカートの裾は 赤い織られたストライプが飾られています。腰は広いウールの紫のベルトで、その端には花の刺繍がされています。胸には何と24個のビーズの装飾品をかけています。いい感じですね。
このサラファンもリネン製です。首回りが狭いのが特徴で、ここも刺繍が施されています。袖やスカートのすそ部分は幾何学模様、エプロンには鳥の模様が刺繍されています。
ブラウスはシンプルに見えますが、リネンの2枚で作られたコンポジットの構成です。赤いサラファンの模様は、白と黄色のケージです。サラファンの胸元は黒い布で処理されています。サラファンの上には同系色のエプロンを付けており、上部は細いベルトが絞められています。髪にはオーソドックスなスカーフ(プラトック)がまかれています。キーロフの衣装はごくシンプルですね。
いかがでしたでしょうか。シルエットそのものは今の感覚には合わなさそうですが、色調や模様、裾の処理など、読者の皆さんの参考になる部分もあればいいなと思います。
では次回もセルゲイコレクションの続きを見ていきましょう。ロシアファッションヒストリー14 セルゲイコレクション2
参考文献およびウェブサイト(すべてロシア語です):
・https://russian7.ru/post/kak-poyavilas-kosovorotka-u-russkikh/
・https://vrns.ru/analytics/1394
・R.V.サハルジェフスカヤ「衣装の «歴史:古代から近代へ」
・カミンスキーN.M.「コスチュームの歴史」
・Далю(ダーリョ)「Толковый словарь живого великорусского языка」
・https://www.culture.ru/
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