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ロシアファッションヒストリー10

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Valenki-Shoes
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ロシアファッションヒストリーのブログ、前回からの続きです。ルパシカやサラファンは勿論のこと、興味深いロシアファッション全般について紹介しています。

前回は、ロシア土着のファッションがいわゆる日常生活に取り入れられ、一般化し、受け入れられていく過程を、アンドレイ・ポールボイが説明していたという話でしたね。

ではアンドレイ・ポールボイが説明していた点をいくつかに分けて解説しましょう。

ロシアファッションの特殊性:

ロシアでは、クロテン、ミンク、その他の貴重な毛皮のコートは10年ぐらい前までごくは一般的でした。その後ヨーロッパにおける動物愛護運動の高まりや、より安価なダウン、その他ハイテク繊維の低価格化により、近頃では見かけなくなりつつあります。しかしそれまでの長い間、ロシアのみならず寒冷な地域での毛皮の需要は大きかったわけです。アンドレイは言います。「ロシアの毛皮文化、またはファッションの秀逸性は誇るべきものだが、それを世界で普及させることは不可能だ。それは気象的にもあまりにも特殊で、また毛皮はその機能、性能もきわめて特殊だからである。」

クロテンのコート

 

ミンクのコート
出典:https://lifeglobe.net/entry/8461

また、こうも言ってます。「 ロシアは依然として西洋の大衆意識のなかであまり認知されていないため、奇抜であるほど良い、という原則が依然として適用されており、衣装の見た目のみが評価されその実用性が取りざたされることはない。」

つまり、まだまだロシアのファッションは、純粋にファッションそのもののや機能性、そして着心地よさではなく、奇抜性が売りの主体だということですね。

「ただし、ロシアには、その際立って目立つ刺繍の柄はなくとも、美しいカットや、安価で心地よい天然素材を中心とした生地のファッションという、厚い層があることも事実だ。」と言っており、そうした観点からの世界へのロシアファッションの浸透の可能性がまだまだあるんだと主張しています。

ブログ筆者もこれには同意です。極寒のロシア、ウラル地方の嫁の実家へ行く際、靴はいいものを持って来いと言われました。さっそく1万円出して、冬山用の登山靴を買いましたが、寒さと水の浸透度から使い物にはならなかったです。すぐに嫁の実家の市場へ行ってブーツを買い求めましたが、豚側製で軽く、内側も毛皮ですこぶるあったかかったです。日本の冬にも履いて約5年もちましたよ。価格は3000円でした。

 

ヒッピーというサブカルチャー:

ちょっと古いですが、40~50年前ヒッピーというファッション、あるいはライフスタイルというものがありましたね。そのヒッピーにロシアのファッションがとりいれられたようです。われわれ日本人には想像できない話ですが。

アンドレイ氏は「ヒッピーの人々は、ネイティブアメリカンの民族風土をファッションに取り入れ(確かに頭に巻いていた細いひもの飾りや、ノースリーブのよれよれ服を着ていた)、さらにロシアの要素をそれらに調和させていた。このことを私は、ロシアの伝統衣装の高い適応能力と認識した。」と言ってます。

1970年代 ヒッピーファッション
出典:https://fashion-history.lovetoknow.com/fashion-history-eras/hippie-style

民族衣装が他文化に浸透するためには:

さらに、氏は

「同時に、異なる文化に対して、その文化の最もシンプルなものが根付くという仮定に気づいた。」

「例えば、あの大きなロシア正統派のココシュニック、幾重にもまかれたロシア特有の多層スカート、これらを、正統的なルールで受け入れようとするロシア以外の文化はまずない。」と述べ、これに関しては以下のように日本の着物や、忍者の衣服を例に挙げて説明しています。

「 日本の着物が、フェスティバルなどの特殊な機会を除いて、日本を越えることはめったにないのと同じ理由で、世界では、日本のファッションの文化はもっとシンプルなものによって影響がみられるのみだ。 例えば、しのび靴(忍者靴)は、は、世界で流行したが、それは非常にスタイリッシュで快適、柔らかい靴底、分離した親指、つまり足の「ミトン」のようなものだが、 このコンセプトに従って作られたブーツ、スニーカーなどは、今民族衣装を販売するすべてのオンラインショップが扱っているくらいだ。」

Ninja shoes
出典:hueoftune.blogspot.com/2014/09/ninja-shoes_12.ht

 

という例です。次に今度はロシアの履物の例を挙げ、

「同じように、 ロシアの伝統的ブーツ、ヴァレンキが浸透することがあるだろうか?確かに現代技術によって、安価で丈夫なブーツを作ることができるかもしれないが、この靴のコンセプトを日常生活に導入する試みは明らかに無意味だ。」という説です。確かに形を見れば、今このような靴を日j調的に掃くことになることは想像しにくいですね。

ヴァレンキ 出典:Wikicommons

 

圧力による強制ではファッションは根付かない:

この主張はすでにこのブログで取り上げた内容から、何度か出てきているものですね。アンドレイ・ポールボイは、この主張をウクライナの例を引き合いにして述べています。当ブログでもウクライナの民族主義の一環として、小学生の制服にウクライナ対応ルパシカを採用している事実を紹介したことがありますが、アンドレイ・ポールの批判は激烈です。

「以上のことを、ウクライナの間違いから学ぶことが非常に有用だ。ウクライナでは、国家レベルで、ウクライナ伝統の刺繍ルパシカを普及させる政策が長い間とられてきた。 しかし、そのような政策への賛同や、ルパシカ着用というトレンドは遂に起こらず、明白に否定的なイデオロギーがみられたのみだった。小学校 1年生の制服から、記念碑へのいたるところまで、ウクライナ伝統のルパシカやサラファンを無理やり着せようという無茶な試みは、人々にアレルギーのみを引き起こし、本来心の中にあるべき、古代の伝統を探そうという動きにならず、過激な民族主義グループのプロパガンダとしてのみ認識され始めた。」という内容です。

ウクライナの小学生の制服
出典:https://news.pn/ru/messages/151071

 

仕事でも、遊びでも、もちろんファッションでも、お仕着せでは楽しめませんね。気づかないところで何かを誰かが提示していて、それを探すでもなく、いわばセレンディピティの中で、提示されているものに偶然触れ感動し、インスピレーションが刺激されるという、そうした流れの中でファッションが存在するべきだと改めて思いました。

まだまだロシアファッションの話は続きます。ロシアファッションヒストリー11

 

参考文献およびウェブサイト(すべてロシア語です):
https://russian7.ru/post/kak-poyavilas-kosovorotka-u-russkikh/
https://vrns.ru/analytics/1394
・R.V.サハルジェフスカヤ「衣装の «歴史:古代から近代へ
・カミンスキーN.M.「コスチュームの歴史」
・Далю(ダーリョ)「Толковый словарь живого великорусского языка」
https://vrns.ru/analytics/1394
https://www.vogue.com/fashion-shows/fall-2009-ready-to-wear/kenzo/slideshow/collection#4

 

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